本日は、平成26年(2014年)3月2日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。昨日に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

私が在職していた当時のキーエンスでは、営業担当者のほとんどは数字意識が高く(日々意識させられることもあって、意識せざるを得なくなります。そして絶対に意識するようになります)、少なくとも毎月の予算目標については、自分自身(個人別)、グループ別、所属事業部別の正確な金額については、すべて頭の中に叩き込まれていました。
ところが、そんな数字意識のあるキーエンスの社員でも、退職してから転職活動中の面接で困惑する質問があります。「あなたは、年間どれくらいの売上実績がありましたか?」。

返答に困る理由は、にわかに信じられないことかしれませんが、「売上高」という数字については、正確に答えられないというのが実情なのです。キーエンスの営業担当者が日々意識する数字は「売上金額」でなく「利益額」なのです。
キーエンスの営業部門の評価は、売上実績重視(昨日綴った、注文を頂いて出荷できた分)ですが、毎月の予算金額はすべて「利益」でカウントするシステムとなっていたのです。

入社した秋に上場会社となり、対外的には売上高数値も発表されましたが、社内での営業担当者の評価基準は利益額です。売上高金額の実績は評価とは一切関係しません。
その利益額管理のシステムは簡単です。各営業担当者が「販売会社」と考えれば理解しやすいと思います。つまり、自身が販売担当する所属の事業部から製品を仕入れて、お客さまに販売する形態です。販売価格(いわゆる希望小売価格)は予め決められています。そして製品ごとに仕入れの金額も決まっていました(1個でもまとまった数量でも原則、仕入れ単価は同じです)。実際の売上金額から仕入れ金額を引いた「利益額」が算出され、営業担当者としての実績額としてカウントするのです。この「利益額」は、粗利(売上総利益)のようなイメージがありますが、実際には粗利と一致しません。仕入れ金額が実際の売上原価ではないからです。

手元に日経ビジネス2003.10.27号があります。特集記事の「キーエンスの秘密」でも、営業担当者が意識するこの利益を「成果額」と紹介され、粗利と同一でないとありました。記事より10数年前に私が在職していた当時も「成果」と呼んでいました。会話の中に「成果目標」「成果実績」という言葉が飛び交います。

さて、記事では触れられていないのですが、営業部門の予算管理で、一般の会社の「売上金額」の管理と、キーエンスの「成果実績」の管理、どう違うか理解できますか?今週はみなさんに事例を出します。簡単な計算です。記載される数値は計算しやすいように全てバーチャル(仮想の金額)です。
ある機器の希望小売価格が1台50万円。事業部からの仕入れ価格が1台25万と仮定します。当月の成果目標として、この機器のみを販売するものとして10台。つまり、25万円×10台の成果合計250万の目標予算とします(売上高に換算すると50万円×10台で500万円)。もちろん、成果目標であれ、売上高目標であれ、当月10台の販売で目標予算を達成します。営業経験の無い方は「全く同じじゃないの?」とお考えかもしれませんが、ひとつのロジックとして考えれば、営業担当者にとっては成果管理の方が厳しいとわかるはずです。
そのヒントをだします。値引きがなければ予算達成に必要な販売台数は同じ10台。では、販売に際して一律20%値引きした場合、予算達成には何台販売する必要があるか、成果目標と売上高目標でそれぞれを計算してみてください。
なお、成果を計算するにあたって、値引いた場合に売上金額は変動(減少)しますが、仕入れ価格は不変(固定)であることがネックになります。中小企業経営者の方は即答できるとともに、今後の経営の参考になるかもしれませんね(こたえはコチラ)。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。

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