本日は、平成26年(2014年)3月15日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】
土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

民間企業の営業部門では、受注・売上の進捗が芳しくない場合、どこの会社でもいわゆる「ヒアリング」という名の下、各部門の管理職・責任者の方々が、経営幹部より都度責任追及されるという場面があると思います。会社の内部留保が潤沢なら短期的には大丈夫でしょうが、売上のショートで赤字になれば経営危機に直面する場合もあり、叱咤激励がおこなわれます。月に一度は胃の痛い思いをされている管理職の方も多いと思いますが、責任あるお立場であれば止むを得ないことですね。
いま回想してみれば、私が在職中のキーエンスでは、世間一般の会社以上に、全営業担当者が予算達成に対する責任を明確に担っていたと思います。
キーエンスの営業担当者の位置づけですが、利益(成果)予算を意識して行動するとはいえ、個人商店とは明らかに違います。個人商店の経営者なら、自由出勤・自由裁量があるということになりますが、会社組織の指揮下にあるので間違いなく労働者であります。そういう意味で、キーエンスの各営業担当者は、個人商店というより一般企業の管理職のような責任をもつ立場であったような気がいたします。
しかしながら、かつて問題になったブラック企業が行う残業代を抑制する「名ばかり管理職」扱いとは全く異なります。以前綴ったように、キーエンスでは営業担当者はプロの一流選手として扱われるのであり、報酬についても本当のプロにふさわしく、一般の担当者でも同業他社の管理職と同等、それ以上の高い報酬があるのは間違いないからです。
◇毎月の売上予算については、世間一般の会社と同じく必達が求められます。月ごとの目標予算とはいえ、毎日の活動の中で進捗状況を確認します。キーエンスで営業部門に配属されれば、数字に無頓着な人でも、どんなに数字に弱い人でも、必ず「数字意識」を持つようになります。
毎月の売上予算の達成について、当時は「各グループ単位で毎月達成する」ことが最低限求められました。意外なことかもしれませんが、全員が予算達成するという目標よりは、一段ハードルが低いのです。この点は、一般の会社と変わらないはずです。毎月の決算日に当月分の実績をカウントします。最終日に注文が殺到しようとも出荷されない分(受注残)は、当月の実績に一切カウントされません。もちろん、これも世間一般と同じであります。
私が勤務していた当時、キーエンスが一般的な会社と異なる点
まず、予算金額のカウントが「売上金額」でなく「成果額」(詳しくは「コチラ」と「コチラ」)であること。そして、その決算日の定時後に、キーエンス独特のイベント(業務)があるということです。
当月のグループ目標予算(成果額の合計)を達成したグループは、夕礼終了後残業なしで即退社します。そして、営業所近所の飲食店で「達成会」を開催、互いに労をねぎらいあいます(グルーブ内に未達成者がいても、グループ目標予算総計が達成していれば、全員が達成会に参加です)。当時は、遅くとも19時には【乾杯】が始まりました。この達成会には、会社からひとりあたり一律5,000円以内程度の補助があったと記憶しています。もちろん達成したグループ全員大喜びで参加します。私が所属していたグループは、【全員お付き合いがよく】、誰かの「もう一軒!」の一言で、各自ポケットマネーで二次会へ。月の最終日が金曜日なら、明日土曜はお休みともあって、次の「三次会」に続きます。楽しい週末の深酒であります。
一方、所属グループが未達成の場合、当日の残業時間を使って「反省会」をおこないます。「反省会」は達成したグループの宴が始まる19時頃に開始されます。制限時間は不定。いくら時間がかかろうが「【良い】【悪い】をはっきりさせる」ことに重きを置きます。もちろん、残業代は全額支給されます。反省会の実質所要時間は2~4時間。私が体験した反省会で一度、午後11時台に退社した経験があります。反省会も所属グループのメンバー全員参加が鉄則。グループ全体の目標予算が未達成となってしまえば、自身の当月個人予算目標を達成していても出席する決まりでした。グループ目標未達成の原因が、自身の未達成による場合、一層プレッシャーのかかるのが反省会でもありました。ただし、予算未達成で反省会に参加しても、暴力はもちろん、個人の尊厳を傷つけられる暴言や人間性を否定する罵倒など、いまで言うパワハラとは一切無縁でありました。
個人的な所感として、週明け早々の月曜あたりが月の決算日だった場合は、正直困りものでした。当日の反省会、翌日が世間一般と同じ月始めの会議。週末には前泊出張の外出。また当時は、毎月の最終土曜日が出勤日でもあったので、その週の日曜は、クタクタになった記憶があります。・・・現在は完全週休2日になったはず?で最終土曜の出勤はなくなって、当時より体力的には楽になった?と思いますが・・・

以上のように、毎月の最終日に全員参加のイベントがあるのは、キーエンス独特のものかもしれません。いま現在から回想すれば、「反省会」の制度は、連座制のイメージで厳しいシステムだとは思いますが、正直言って私の退職理由にはなりません。他の会社のシステムや事情など全く知らない新卒入社の私にとって、勤務していた当時は全然へっちゃらな内容でありました。実際、ロジカルに考えれば、グループが反省会とならないように、グループのマイナス分をメンバーの誰かが補てんする形で、たくさんの数字をだす(つまり売上実績を増やす)だけで解決する内容です。
私の入社一年目、所属した販売グルーブの達成にむけて、先輩方がその役を担われました。2年目には、個人的に工夫したある販売戦術が大当たりし、私もグループの予算目標の達成にかなり貢献できました。当時は、遠距離の担当地区のフォローで体力的に相当キツかったかもしれませんが、敵前逃亡などする意思はありませんでした。自身がもし退職するのなら、もちろん不正などは一切なく、大手を振って、惜しまれる人物として退職できるよう、実績を上げてやろうと腹をくくって仕事をしていたのです。心の支えになったこと(いまの言葉でモチベーション)については、高い報酬ではありません。いずれ語ることにします。
さて、画期的ともいえる販売戦術の大成功は、かつてブログで書いた【猫の恩返し】4回のうちの1回だったに違いないと思います。実際に「先が見えないな・・・」と思った1988年の梅雨あけ直後から、年度末の3月まで目標予算のクリアはもちろん、売上実績が信じられないほど爆発的に伸びたからであります。

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