本日は、平成26年(2014年)3月23日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

皆さまは「付加価値」という言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?
中小企業の経営者の方や、コンサルタント業の方は、経営革新支援における経営目標の付加価値(営業利益+人件費+減価償却費)をイメージされると思います。1987年(昭和62年)キーエンスに入社した当時の私は、経済学部出身であったので、国内総生産GDP(国内で生み出される付加価値の総計)のみが、頭に浮かびました。
入社した当時のキーエンスは、売上高が100億に満たない規模でしたが、売上高経常利益率は既に40%の領域へ。高い利益率を維持できたのは、単純に「儲けの多い商品」がたくさん売れた結果だと誰もが思うのですが、キーエンスでは、やや表現が違って「付加価値の高い商品」を展開している結果であると説明を受けました。
確か入社した初日だったと思います。創業者から、その「付加価値」について説明がありました。キーエンスにおける「付加価値」の考え方について、創業者がいつもように紳士的かつ冷静に、そしてわかりやすく説明を始めます。
「私が学生時代、アルバイトをしていて、毎朝、駅近所でパンを購入していました。7時開店と6時30分開店の2軒のお店がありました、同じ商品なのに、開店時間の早いお店の側の価格が高い。では高いからといって売れないかというと、そうでもない。7時より早い時間に購入したいという顧客は相当数いて、実際、価格の高い方のお店のパンを買います」。
続けて話されます。
「これも学生時代のことですが、休日に山(関西の有名な観光地ですが略します)に遊びに行くことがありました、すると、同じ商品である○○○(ある飲料です)が、頂上付近の方が、街中より明らかに高い値段で売られています。では高いから売れないかというと、開店の早いパン屋さんと同じで、相当数売れるわけです。」
「つまり、朝早いという付加価値、街中からはるばる頂上まで輸送する付加価値に、お客さまが価値を認めて購入されるわけです。」
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個人的所感ですが、以上の講話を聴いて、当時「高い利益を上げる」ことについて、愚直にまい進していかなければならないという意識が芽生えました。
民間企業は(もろろん、コンプライアンス遵守で)、利益を上げることが必要であります。
一般的な会社の経営者は、利益を上げることについて、
「売上を上げなさい」あるいは「コストを下げなさい」と訓示する場合が多いと思います
企業が高い利益を上げることについて、現在は「勝ち組」と称して、堂々と胸をはっていいような時代にもなりましたが、私がキーエンスに入社した1980年代当時は、社会が豊かになったとはいえ、私の親の世代が戦時中の窮乏を実際に経験していたことから、清貧を美徳とする意識が残る時代であったと思います。
そのため、企業が高い利益を上げると、まじめに事業を行った利益でも、その企業努力を評価せず、単に「儲けすぎだ」と嫉妬も交えた感情的な批判をする風潮があったと思います。
創業者が語る「付加価値」という言葉には、高い利益を上げることについて、勤務する従業員のモチベーションを維持する効果をも狙っていたのだと思います。
後日、同期の新入社員から突拍子もない質問がありました。「世間から、儲けすぎだ・暴利だという批判を受けるのではないですか?」。「付加価値」の説明があった後なので、ややKY気味な質問かもしれません。
それでも、創業者は激高することなく、いつもと同じく冷静に、そして力強く即答されます。
「もし暴利ということなら、必ず競合会社が出現して安い価格の同等品でその会社を叩きます。資本主義社会における自由競争の原理で、暴利というものはありえません」。当時創業者は、現在の私よりはるかに若い42歳。こういう思考や仕掛けは、私には思いもつきません。今もって凄い経営者だと思います。
私が入社した当時、3つあった事業部のうちのひとつが、黎明期のキーエンス(リード電機時代)を急成長させ、高い利益を獲得した商品群を取り扱っていました。センサ応用製品といわれるもので、性能・価格ともに基本的なセンサと精密測定機器の中間に位置する商品であります。これらは、さしたる競合会社がなかったと聞かされました。
しかしながら、成長を支えたそれらの商品群も、精密測定機器の分野の販売担当であった私にとっては、所属事業部も違いますし、失礼ながら「過去の製品」というイメージがあったので、全く興味がありませんでした。
ところが、キーエンスを退職した後ライバル会社に転職して(私のプロフィールは、コチラです)、今度はキーエンスに勝利するために、競合品でもないそれらの商品群についても、「何故、付加価値が高いのか?開発する技術的な難易度は?ライバル会社は本当に存在しなかったのか?」などを真面目に研究しました。結果、これらのセンサ応用製品は、まさに中小企業の製造業がお手本にすべき製品群だったと思います。機会あればそのあたりも記述していこうと思います。
(キーエンス黎明期のヒット商品についての記事は、コチラをクリックしてください)
『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみましたコチラをクリックしてください)。

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