本日は、平成26年(2014年)3月29日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

まもなく4月 新卒の方の入社時期ですね。
今回は、凄腕であった私の直属の上司について綴ります。ご経験ある方もいると思いますが、勤務先でいわゆる「ハズレの上司」にあたると毎日が苦痛ですね。ただ、こればかりは運が悪いと諦めるしかないのが、宮仕えのツライところ。さっさと退職するのは、さすがにモッタイナイので、自身か相手のいずれかが異動するまでジッと待つのみでしょうか。
私の場合、キーエンスに新卒入社直後、それは宝くじに当選するような幸運に恵まれました。私の所属した販売グループの責任者は、創業者と同じく当時最も尊敬できる方でした。ただ、社会人になった最初の時点で、あまりにも立派な上司に巡り会うことは、とても幸せなことでもありますが、以降の会社員生活が不自由になる場合がありますね。意識していなくても、新しい上司を素晴らしい上司と比べる状況になる、同じ業務シーンに必ず遭遇するものです、(「はあ?」「説明能力が絶望的」「思考力と判断力が、この程度なの?」「ああ残念」)と落胆するケースがあるからです。
私が入社した当時のキーエンスの営業部門では、事業部別のセールスで、実績を上げた営業担当者が(→)リーダー(→)責任者という順で、責任ある地位に就いていきます(責任者については、正式な名称がありますが今回割愛します)。
責任者ともなると、複数のグループの統括と同時に、直属のグループの売上予算、そして自身の個人予算目標をもクリアしなければならず、しかも人材育成の責任も担うことから、キーエンスの営業部門で最も激務の職位のはずです。一般的な会社でいえば、統括課長兼担当課長というところでしょうか・・・具体的な販売施策は、この責任者、リーダーを中心に、前線の営業部門で、あれこれ試行錯誤していた時代だったと思います。
私の直属の上司にあたる責任者の方は、頭脳明晰で記憶力が抜群。つじつまのあわない報告は、まずもって通用しません。声も大きく豪放磊落(ごうほうらいらく)。ところが、意外なことに「精神論的な営業」が大嫌い。データに基づく采配、知恵を絞った営業活動を追求するそのスタンスは、もちろん周囲を惹きつけます。私のただいまの立場(中小企業診断士)から当時を振り返れば、とても経営感覚に優れた方で、らつ腕を振るう中小企業の社長さんを連想します。この方より、配慮頂いたこと、直に受けた指導内容は今も忘れません。
◆人間味
中途採用で入社されたと伺いました。私より5年ほどキャリアが長い方でした。名を聞けば誰もが知る超難関大学を卒業後、就職した会社で「最終電車で帰れない」「毎日が飛び込み」という個人顧客むけの営業を数年間ご経験されたそうです。その後キーエンス(もちろん旧社名リード電機時代)に転職。
過去に育成した部下は、すべて中途採用者。私が初めての「新卒の部下」です。どう教育すればいいのか、戸惑われたはずです。というのも、キーエンスに中途採用で入社される方は、厳しい会社で営業経験がある方がほとんどで、まさに即戦力として実績を上げられます。私が入社した当時、短期的な観点では中途採用者の方のほうが確実に売上実績(成果)をあげる傾向があったと思います。新卒入社組は「見積書」、「取引条件」、「モノ」、「伝票」、「検収」・・・といわれても初めてづくし。いちからの教育が必要な為、正直言って当時は「手間のかかる代物」であったに違いないはずです。
以前綴りましたが、営業所では短期的な成果、つまり毎月のグループでの売上予算達成を強く求められます。販売各グループのリーダー(責任者)の本音は、新卒者より中途採用者の部下がありがたいはずです。実際、増員に際して露骨に「新卒は要らない、中途採用者希望」と経営幹部に訴えた営業所長も中にはいたようでした。
私が配属された営業所では、新卒の先輩は1年上の3名のみ。担当事業部が決まった時、私が所属する販売グループには新卒の先輩がゼロ。なんとなく肩身が狭い思いをしていました。それを察しておられたのか、グループの先輩が同席している場で責任者が「確かに、新卒は最初手間がかかるだろうけど(信じられないほどの高い競争率を突破して入社しているのだから)素養が違うはずだ。特にうちには、優秀な人が入ったと思っている。必ず強力な戦力になる。期待しているから」と発言されたのです。この「檄文(げきぶん)」に近いひとことで、配属直後の不安は吹き飛びました。常に「人の心が読める方」なのです。その後、「(育成に時間はかかるかもしれないが)増員に際しては新卒採用にシフトし、キーエンスの業績をさらに伸長させる」という、創業者の当時の方針を具現化した、管理職のおひとりともなられたのです。

責任者は、仕事中はすべてに集中して真剣そのもの。但しオフの時(達成会)などでは、ユーモアあふれる別人のような人物です。あるときグループの誰かから「(責任者の)最終面接試験の際、どんなカンジだったのですか?」という質問がでました。
じゃ話そうとなって「(入社前に一番興味があった)こちらの社長さんて、どういった方なのでしょうか?」と質問した途端、いままで話していた相手から「社長はわたくしです」と創業者から冷静に回答され・・・心の中で仰天して、恐縮して(「何て質問してしまったんだ!ああ不合格だ!」)大いに後悔されたらしいです。それでも内定を頂けたとのことでした。

発言される「心がけ」については、すべて重みがありました。
◆営業担当者として必要な心がけ(脱精神論)
「ヤル気が無い、ココ一番に元気が無いというのは論外だが、気合でモノは売れない」
「熱心な対応をする営業は歓迎されるが、しつこい営業とは全く異なるものだと認識すること」
「足で稼ぐだけの営業スタイルは評価できない。実際は無駄な足を運んでいる場合がある。あわせて最短最速で受注できる力も持ち合わさなければならない」
◆販売戦術(施策)についての心がけ
「(キーエンス勤務の経験で)営業成績がいい時にこそ、次の手を打つこと。未達成になってからジタバタし始めても、修正するのは手遅れという場合が多い」
「販売施策は、まずトライとして浅く実施で良い。初動に時間をかけないこと。ただし手数はたくさん打つこと。効果が無ければ即打ち切り。効果があれば、追加でたたみかけるように実施すること」
いつも納得させられる側の弟子であった私。精密計測機器の直販営業1年目は、予算目標を毎月達成というのは難しく、2カ月連続未達成になる一方、その翌月に累積のマイナスを取り戻す大幅な予算達成。結局、年度目標は順次クリアするのですが「不安定な成績」。キーエンスでは毎月コンスタントに連続達成することが求められます。グループ未達成の原因が私にあって反省会開催ということもありました。
入社一年目の秋頃に私が提案した施策がありました。
責任者からは、いつものように「体制を整えての実施より、浅くていいのでとにかく速やかに」と指示を受けました。作戦でいえば「威力偵察」というところでしょう。当初は成果が出なかったのですが、他の施策と違って責任者がずっと注視していたのは間違いありません。芳しくない経過報告をしても「しばらくは続けてみよう、うまくいくんじゃないかな」という判断でした。後に成果が現れ、グループの先輩がさらに枝葉をつけることで、「脱・しつこい営業」「最短で受注」「ライバル会社に効率的に勝つ」を兼ね備えた最強の戦術になるとは、私自身はもちろん当時は誰も予想できなかったはずです。現在のキーエンス営業スタイルのスタンダードになっていると思います。
入社して2年目に、最大の危機となるライバル会社の大反撃に対処できたのも、この時点での備えがあったからです。当時、この責任者がいなければ、私が販売担当していた商品群は全滅だったのではないか?と断言できると思います。私の上司にあたる責任者のキーエンスに対する貢献度は、相当なものだったと、今も確信しています。
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