本日は、平成26年(2014年)4月13日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。昨日に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

前回まで「一般的な会社と異なる点」シリーズでしたが、本日から、テーマを変えます。

私は、新卒で入社したキーエンスで、精密計測機器の直販営業を担当しておりました。退職後、同じ精密計測機器を扱うライバル会社に転じ(私のプロフィールはこちら)、キーエンスとの販売競争に勝つためにさまざまな研究をいたしました。キーエンスの経営戦略の研究は、即座に中断させましたが(→詳しくはコチラ)、キーエンスの製品戦略については継続して研究したことがあります。まず注目したのは、キーエンスの成長を支えた黎明期(れいめいき)の製品についてであります。キーエンスは今や分析機器や測定機器で有名でありますが、中小企業であった(旧社名リード電機)時代に急成長を支えたのは「センサ」です。私自身、センサというものはキーエンス在職時代も転職後も全く分野が異なるため、正直言ってさほど関心の無かった機器でしたが、「彼(か)を知る」目的で、改めて考察したのであります。
創業から6年ほど経過した1980年頃(私が入社する7年ほど前)。センサのなかでも巻き線技術を応用した「磁気(渦電流)方式」関連製品の大ヒットが、リード電機の転換期だったと思います。この「磁気(渦電流)方式」を含めてセンサという分野では、キーエンスは後発の参入のはずです。「磁気(渦電流)方式」のセンサは、対象物が主に金属に限られ、また光ほど距離はとれないものの光学式センサと同様に対象物に触らず(非接触)、生産ライン上でのON-OFF(モノがある・ない)検知に利用されます。このON-OFF(モノがある・ない)検知する基本的なタイプと呼ばれるセンサは、既に複数の会社が先行しており、特に某巨大企業がシェアの大部分を握っていたのであります。
ところが、他社と同じカテゴリーの「磁気(渦電流)方式」のセンサでありながら、キーエンス(リード電機)は、オリジナルの商品を続々開発して市場投入、急成長します。その代表的な機器が、「金属板2枚送り検出センサ」(当時は「2枚送り検知器」と呼んでいたと思います)です。発売当初から、プレス業界の顧客にとっては、その製品の存在を知れば、「誰もがのどから手が出るほどに」導入したい機器であったに違いありません。
その「金属板2枚送り検出センサ」は、現在も販売されているようです。センサというより、センサを応用・進化させた製品と定義したほうが妥当かもしれません。
カタログ等でも公開されているようですが、機能を簡単に示します。プレス製品の材料(金属の板)をプレス機械にセットする前の経路上にセンサを設置します。つまり、設置された上側と下側のセンサの空間に、材料の金属板を通してから、プレス機械にセットする作業手順をとります。このセンサが、材料に触れることなく常時監視する役目を担うのであります。
この「金属2枚送り検出器」が監視しているのは、
材料の金属板1枚が通過した時は、正常「OK」。
万一、2枚以上(3枚、4枚…)が通過した時は、すべて異常「NG」と判定するのです。
この判定機能が、どうやら他のセンサメーカーの製品に無く、キーエンス(当時リード電機)の独断場になったようです。先行する大手企業のON-OFF(モノがある・無い)のみを判別する基本的なセンサでは、材料である金属の板が1枚でも2枚以上でも、ともにON(モノがある)と判定するのみで、1枚(正常)なのか2枚以上(異常)なのかの判断(判定)ができないのです。キーエンスの「金属2枚送り検知器」には、この「1枚か、2枚以上か」を判別(判定)する機能(一般的にはコンパレート機能と呼ばれるはずです)を、センサにつないだ専用のアンプ(目覚まし時計のようなサイズ)に持たせていたのです。他のセンサメーカーに無い製品の為、独占商品となります。市場で流通している通常のセンサより、はるかに利益率の高い(付加価値の高い)商品、すなわち高額な商品でしたが、大ヒットします。
高額でもヒットした理由、いわゆる付加価値の部分については省略しますが、ここで最大の謎があります。利益率の高いこの機器の同等品を、先行する複数のセンサメーカー、あるいは他の電機関連の企業が、何故追随して後発参入しなかったのかという点です。歴史の事実に「If(もし)」は禁物なのですが、今回、技術的な見地から、キーエンスの「金属2枚送り検出器」を検証してみます(もちろん、あくまで個人的な所感であります)。
センサの部分。
非接触で金属材料を検知する渦電流方式のセンサの部分は、コイルを巻く技術(巻き線技術)を応用したものです。同じ技術を持つ企業として、センサを先行発売している複数のライバル企業はもちろん、「潜在的な脅威」となる企業が、当時電機業界であまた存在していたはずです。たとえば、かつて日本のお家芸であったオーディオやビデオなどのテープ媒体に記録する磁気ヘッド、通信機(回路・アンテナ)、かつて電話局の交換機に利用されていた(機械的な)リレー部品、食品の異物や刃物などの危険物を検知する金属検出器、精密モーター等々を手掛けていた電機メーカー各社は「コイルを巻く技術」で、間違いなくキーエンスと同等以上の技術力を有していたはずです。
また、センサをつなぐアンプ(指示計)の部分が、他社製品と差別化されていたのですが、特許を取得していたという記憶はありません。では、この指示計の回路を作りあげる開発・設計が難解であったのでしょうか?よく考えると、機能的には材料の板が「1枚」か「2枚以上」かの判別をしているだけであります。通過した板の実際の厚さ(何mm)の正確な寸法を測定してから判定しているわけではありません。つまり大きく変動する「レベル値の変化」を、判定に使っているとみるべきです。当時、寸法測定という技術を持つ計測機器の会社では、基準厚さの原器ももっていて、実際の厚さの寸法値まで読み取るという回路を設計できることから、「1枚」か「2枚以上」判定という技術については、それほど難易度が高くなかったはずです。
しかしながら、センサで先行する会社、同様の技術をもつ会社、高い技術をもつ他の会社が、キーエンスが販売するオリジナルセンサの市場に参入することはなかったのであります。つまり、黎明期のキーエンスの独走を、他の会社が全く阻止できなかったのです。その後のキーエンスは、ON-OFF(モノがある・無い)を判別する基本的なセンサにも参入して、同業のセンサメーカーにとって最大の脅威となり、現在もそうであるに違いありません。
技術的アプローチのみで検証して、他社が対抗商品を開発・市場投入しなかったという点が、転職してからキーエンスを研究していた私にとって当時「最大の謎」でありました。その後、競争戦略全般を研究していくうちに、理由がハッキリしてきました。現在の経営コンサルタントの立場としては、語れる内容なのですが、今回のような「技術的アプローチ」だけでは説明が困難です。
みなさまは、どうお考えになりますか?経営者のみなさまや、マーケティング部門、そして経営企画室に所属される方は一度、考察されることをオススメいたします。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。

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