本日は、平成26年(2014年)4月26日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

前回は、大手メーカーを含む先行する複数のライバル会社との受注競争に勝つ「基本的なセンサ」の販売を担当するキーエンスの営業担当者をメインに綴りました。
受注競争といえば、当時、私が所属した精密計測機器の部門でも、ライバル会社が複数ありました。ただ当時の主力の機器は、既に綴りましたが、他社追随型の製品、簡単にいえば、精度面では及ばないが、小型化かつ低価格を志向したものでした。例えば、他社製で当時もっとも高精度な機器(価格帯190~250万円)に対して、60~120万円程度の商品を投入。広く市場への普及を図る目的があったと思います。特に老舗でもある、大手ハイテク会社の志向する市場と一部重なっている場合もありましたが、深刻な脅威とまでの認識はありませんでした。

一般的に測定機器というものは、市場から常に「さらなる高精度の要求」があります。その意味でキーエンスに対しても、先行する大手ハイテク企業と同等性能以上の機器の発売が望まれていました。もちろん高精度という分野は価格帯も高額の部類に入るため、キーエンスの営業担当者にとって、誰もが製品化を期待していたはずです。その期待があっても当時、水面下で本当に開発・製品化がすすんでいるとは営業部門の誰もが知る由はありませんでした。
発売時期はぼんやりした記憶です。おそらく入社2年目、1988年の初夏(5月頃?)だったと思います。
ついに待ちに待ったその新製品が登場しました。先行する大手ハイテク会社が発売していた250万円の機器と同等の精度で希望小売価格が133万円と約半額!発売開始前のPR解禁とともに、お客さまの関心も高く、他のキーエンスの新製品と同様に、当初から相当数の引き合いが舞い込んだのでした。
ところが発売からほどなく、前回ご登場頂いた、ライバルとの競争に際して値引き無しで受注できる凄腕の先輩が顧客訪問した際、意外な情報をキャッチしました。この大手ハイテク会社が100万を切る価格を提示したという情報です。当初は、250万の機器を在庫処分しているのでは?と考えていましたが、初耳の型式。ほどなくキーエンスよりも高精度で価格の安い新製品が発売されると判明したのでした。
キーエンスより高精度・低価格、そしてキーエンスの発売開始を狙ったかのような絶妙の市場投入時期。大手ハイテク会社の本格的な逆襲が始まったのです。
当時、東京の展示会(現在の国際展示場はなく、晴海ふ頭が会場でした)に出展されているとの情報をつかんで、土曜日の休日にプライベートの散歩を兼ねて、自身で足を運んで見学に行きました。キーエンスの新製品が133万円の1種類に対して、対抗品となる同タイプが3種類。希望小売価格が98万、90万、85万と、全ての機器を安く設定。当日全機種展示されていました。インパクトのあるお披露目です。
また、今までキーエンスがラインナップしていた、精度面では及ばないが、小型化かつ低価格を志向したタイプに対抗する、高精度・低価格の3タイプも同時展示。計6タイプを一気に市場投入して、このカテゴリーの計測機器について、キーエンスを完全に駆逐する作戦に出たことは、はっきりわかりました。当時のキーエンスは上場1年目を全社売上高100億円、大手ハイテク会社はその9倍程度の売上高があったと思います。
展示されていた新製品。キーエンスの高精度タイプの指示計の部分は、両手で持ち上げるイメージがありましたが、大手ハイテク会社の製品は、片手で持ち上げられるほどの軽さ。小型化・軽量化されていて、回路設計・実装技術の差を認識させられました。
さらに測定原理としてレーザ光を使った機器なのですが、ビーム径をキーエンスの約1/5に絞りこんだ性能。軽薄短小がトレンドであったお客さまのモノづくりの現場や、研究開発にマッチしていました。現在脚光を浴びる青色レーザなど、短い波長のレーザが当時あればビームを絞りこむことも容易ですが、当時は両社とも、同じ波長の長いレーザ光を採用していて、大手ハイテク会社の機器は、理論上の限界値までの性能がでており、光学技術の格差をまざまざと思い知らされたのでした。土曜とはいえ、ブースには見学者が多数。この光景に、正直圧倒されたのを覚えています。今後、毎月の売上予算達成が困難になるのは必至で、むしろ恐怖を感じました。
「どこかにスキはないのか?」展示会で頂いたカタログを徹底的に読み込みました。販売グループの先輩も、展示会の見学に出向いていたようでした。週明けにカタログをもとに勉強会を実施しましたが、「おそらく、どうにもならない」という結論に至りました。ライバル会社との受注競争に強い前述の先輩も、このタイプの機器だけは対処のしようがなく、性能の差で実際に失注する結果となりました。つまり凄腕の「営業力」でも、対処できなかったのです。後に、事業部の担当者や他の営業所も交えて対策を協議しましたが、有効な対策がでることもなく、事実上のお手上げ。値引きしても受注は不可能です。期待されて登場したキーエンスの新製品は、ロングセラーのキーエンスの中では、早い時期に姿を消したと思います。もちろん、その後のキーエンスは高精度の機器を開発・販売していくわけですが、当時の精密計測機器の販売グループにとって、最大の危機を迎えた記憶があります。
私個人は、このライバルとなる大手ハイテク会社の名前を頂いて「アンリツ・ショック」と呼称していました。実のところ研究すればするほど「惚れ惚れする機器」だったのです。もちろん、職場でそんな発言をすることは許されませんが・・・
この大手ハイテク会社の本格的な反撃で、キーエンスの精密計測機器の部門の疾走が鈍化したのは間違いなかったはずです。それでも売上目標予算は達成しなければなりません。当時私が所属したキーエンスの営業グループでは、責任者以下全員「製品が悪くて売れない」「事業部の責任だ」などと、ツベコベ文句を言っているヒマなどなかったのです。実際、凄腕の責任者以下販売グループ全員が、この難局を打開していくのです。

私が驚愕し、後に惚れ込んだその測定機器は
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