本日は、平成26年(2014年)6月21日土曜日

【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です。

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

キーエンスを退職した当時のお話になりますが、キーエンスで直販担当した精密計測機器の分野では、複数のライバル会社が存在しました。その中でも機器の性能という分野では、開発技術力を看板とするアンリツ株式会社が群を抜いて先行していました。(詳しくは実体験を綴ったコチラの記事を)。その後、思いもかけずアンリツに転職して、キーエンスと同等品の販売担当を拝命した際には、製品力で優位である当方が、販売競争の場面でも優位になるのは確実であろうと考えました。しかしながら、企業間競争を「戦史」とリンクさせる考え方があって、あてはめてみると不安になる点がありました。

戦史と現代の企業間競争との関係 実際の戦争は悲惨なものであり、今後も一切ご免こうむりたいと誰もが思うはずで、私も全く同感であります。一方、実際の戦史を現代の企業間競争と関連させる書籍が、20数年前もそして現在も書店でならんでいます。テーマは戦略、戦術の類であります。ライバル会社と日々戦っているビジネスマンには、なかなか興味を惹くものでありますね。群雄割拠の戦国時代に活躍した武将や、古代中国の三国志などは大変人気があり、個人的にも興味があります。しかしながら、自身が関与していたビジネスに、英雄や将軍の歴史が、そのまま応用するのは難しいような気がしていました。関わっていた測定機器の販売競争は、工業力を背景に開発された近代兵器を使った戦史にあてはめた方が、妥当だと考えていたからです。

◆戦史によれば「高い性能の機器(兵器)を持つ側が、勝利するとは限らない」 意外なことですが、最高の性能の機器(兵器)をもっていても、戦争には勝てないという史実があります。技術の結集ともいうべき測定機器。その販売競争に、参考にしなければならないと考えた戦史があります。工業力(技術力)を背景にした、性能勝負の近代兵器を使った戦いの中でずっと注目していたのが、第二次世界大戦後半のヨーロッパ西部戦線です。米国がノルマンディーに上陸した後の対ドイツ戦が、測定機器の販売競争にリンクできると考えていました。

測定機器と同様に、工業力を結集した主な兵器のひとつが「戦車」であります。
ヨーロッパの西部戦線で、米国の主力となるのは中型戦車M4シャーマン。
対するドイツは、ひとまわり大きい当時最強といわれた重戦車ティーゲル(タイガー)戦車。この戦車同士も、直接の戦闘を繰り広げたようです。
正面に向き合って戦えば、ドイツのティーゲル戦車が圧勝。大型で装甲板が厚く、相手の砲弾は全く通用しない一方、米国の戦車を一撃で撃破できる強力な大砲を装備。その性能の差は歴然なのであります。

このドイツの無敵の戦車に対抗する手段として、米軍の前線からの要望はもちろん「対抗できる重戦車の配備」であります。しかしながら、米国本国の上層部は、重戦車の配備に注力せず、真っ向勝負で勝てないはずの中型戦車M4シャーマンの大量生産と配備で、終戦までドイツに対抗したのです。

結果は、史実の通りで、弱い戦車を投入した米国を中心とした連合軍の勝利に終わります。「強い戦車を相手に、何故米国が勝利できたのか?」・・・ずっと疑問に思っていました。機会あるごとに、戦史に詳しそうな人に見解を伺いました。

「ドイツは燃料等の補給体制が弱体化していた為、最強の戦車を効率的に運用できなかった」と説明を受けました。納得です。
さらに、別の方によると「当時の欧州戦線は、相手を包囲した時点で勝ち。包囲された軍団は、戦闘を継続すると全滅してしまうので降伏するというのが常識。
ドイツの戦車は無敵であっても、配備数が米国に比べて圧倒的に少ない。
対して米国の中型戦車は、量産しやすく戦場に大量投入できる。
米国の戦術は、まず戦線を大きく広げてから、徐々に包囲の輪を狭めていく。この場合、確率的に相手の強い戦車と戦う場面もあるだろうが、ほとんどの地域では戦車が配備されていない。つまり、戦車のいない敵を相手にする場合が多いので、中型戦車でも勝ちながら前進できる。時間とともに包囲の輪を徐々に小さくしていき【完全包囲】。そして相手の軍団が降伏。弱い戦車でも、大量に投入して、敵軍を包囲できたことが勝因」と説明をうけました。こちらも納得です。戦車の性能で劣っていた米国が、勝利できた理由は、詳しい方々の指摘の通り、戦車の性能だけでなく補給体制や大量投入にあるような気がします。つまり兵器の性能自体は、二の次でもよさそうなのであります。

測定機器の販売競争に話を戻します。当時の機器群は、どう比較研究してもアンリツの機器が性能的に格段に勝っており、キーエンスの製品は、どう考えても不利でありました。ところが、以上の戦史をあてはめると「キーエンスより性能のいい機器をもつアンリツが、敗れる場合もある?」となってしまいます。企業間競争の場面で、補給体制は、お客さまの即納要求に応えられるか否ということに通じていて、理解はできます。しかしビジネスの場面で、強い兵器(同等価格で、性能のいい機器)をもっている側が、包囲されて降伏(敗北)するというのが、当時の私には全く見当がつかなかったのです。技術力がものをいう測定機器の販売を巡る競争は、この戦史とは異なるものだと考えていました。(いま思い返せば未熟なのですが)当時の私の持論は、測定機器の販売競争では最高の性能を持つ会社が最終的に勝利する。つまり、アンリツがキーエンスに勝利するはずなのであります。簡単なロジックでもあり、当初はその通りに進みました。
アンリツに転職した当時、心の中で『これはタイガー戦車だ』と唸った
測定機器のひとつがあります >>>コチラをクリックしてください。

しかしながら、時間経過とともに史実とビジネスがリンクする懸念が現実味を帯びてきます。「技術力・商品力」と「営業力」だけでは勝利できない現実を思い知らされます。私が「競争戦略」の研究を開始したのも、当時の対キーエンスを含む販売競争がきっかけでした。誰もが答えられない、当時一般には普及していないであろう「BtoBの分野で、ライバル会社に勝つための普遍的な戦略」というものが必ず存在するはずで、それを追い求めることに興味を持ち始めるようになったのです。その後、実際の企業間競争(大手や中小企業を含む)の場面で、「製造業・BtoB・訪問型営業の企業が高い利益を獲得する競争戦略」の研究を20年以上続けて、そのロジックを完成させました。関連して、今春には「新規事業を成功させるノウハウ」について書籍化もいたしました(執筆書籍についてはコチラ)。キーエンスに入社・退職。当時ライバルであったアンリツに入社、そして独立。「競争」というテーマで、人生思いもかけないことが続いています。毎日が勉強であります。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。
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