本日は、平成26年(2014年)8月17日(日)
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です。

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

キーエンスからアンリツに転職して、まさにキーエンスと競合する商品の直販担当を拝命し、一週間後には「独りで営業」を実施していました。
転職したわけですので、社内の各種手続き(受注した際の出荷手続き等)の違いについては、もちろん戸惑ったりしましたが、お客さまへのアプローチや折衝については、キーエンス勤務時代で習得したスキルをそのまま活用できたため、特に問題もなく進みました。

キーエンス同様、アンリツにも顧客訪問デモ用の機器が用意されていて、入社してから数日後に操作できる機会がありました。かつてキーエンス勤務時代に展示会で見学した(というより、徹底的に思い知らされた)当時世界最高の精度を誇る機器です。カタログスペックについては、キーエンス勤務時代に「アンリツ対策上の必須項目として」既に頭に入っていたのですが、初めて手にする取扱説明書を参照しながら操作してみるにつれて、予想以上の機器で素晴らしい限り・・・正直言って鳥肌が立ちました。しかもキーエンスの機器よりも希望小売価格が(何故か)安く設定されていた為、強い競争力のある商品となります。転職したばかりの緊張感の中にあって、お客さまにデモ機を持参して訪問できる日が楽しみになりました。

キーエンス勤務時代、アンリツの展示ブースで高精度に思い知らされた機器、
そして、アンリツに入社して鳥肌の立った機器・・・についての詳細は、

>>>コチラをクリックしてください(外観の写真もあります)

ただ素晴らしい機器であるにせよ、場合によりお客さまから取扱説明書以上に突っ込んだ技術的質問が寄せられる場合があります。これは測定機器を販売する以上、当然のことです。その場合、営業部門をサポートする部門との折衝が必要となります。キーエンス時代は、専門の営業サポート部門がありましたが、開発・設計の担当者と直接やりとりすることなどは絶対にありえませんでした。ところが、当時のアンリツの精密計測機器の部門では、実際に開発・設計に関わったエンジニアから営業担当者がサポートを受ける場合があると知りました。そして、その社内の仕組みとは別に、世界最高精度の機器を目の当たりにして、素朴に「どんな人が、開発・設計されたのだろう?」と興味が湧いていました。嬉しいことに、ほどなくご対面の機会がありました(気分的には、ベストセラー作家との対面のようでワクワクしました)。結果は予想していた通りで、つくづくと納得いたしました。キーエンス時代に、たくさんのお客さまと折衝する機会がありました。そこで気がついたのですが、いわゆるハイレベルのエンジニアにいくつか共通している点があると思っていました。もちろん、私の私見です。

そのひとつは、「威張らず謙虚」。威張るエンジニアも世の中にはいますが、それは肩書上のエンジニアだけというのが私の経験則です。真のエンジニアは、内に秘めたる闘志とは別に、高い能力と反比例するような謙虚な姿勢を持たれています。アンリツに転職した当時、私が販売担当する部門の開発・設計エンジニアが全員がそうであったので、ただ驚くほかなかったのです。

顧客ニーズを基に商品を企画・開発するキーエンスと違って、アンリツは「他社のマネをしない」「他社が追随できない」オリジナル&ハイレベルという方針の下、「開発・設計部門」が中心になって、新製品を開発していたようでした。技術志向型の会社で、エンジニアが全社を引っ張っていく社風だからこそ、キーエンスを凌駕する世界最高精度の機器を開発できたのだと納得もしました。

但し、当時の私には誤解がありました。アンリツはガチガチの技術志向で営業部門の意見が全く反映されない会社なのかな?と。その点からか、入社してから模様眺めをしていたのです。当時、折にふれて日々の営業活動で得たお客さまのニーズをフィードバックしていました。特に指示もなく自主的に行っていたことです。もちろん、無いモノねだりをするつもりは全くありません。将来の新製品への参考程度の意図です。ところが、オプションや簡単な改造なども、市場性ありと見るや「できますよ」「やりましょう」と連絡を受けてスムースに進みます。特注を一切受けないキーエンス時代には考えられないことでした。
もちろん、現有製品の改造では無理な新製品となるニーズもあります。あちこちのお客さまからのリクエストを、まとめもせず個別にバラバラ送っていたと思います。精度の根幹となる測定機器の原理云々より、「機能」や「使い勝手」についてです。しばらくして、たまたま通りすがりに開発・設計部門で呼び止められました。「あくまで構想段階ですよ」と前置きを受け、アイデアと称する仕様(デザイン)を見せられて驚きました。バラバラで複数あった顧客ニーズが、いとも簡単に集約されていて、すべて実現できる機器となっているのです。もちろん私以外からの市場ニーズも盛り込まれています。こちらは思わず「エッ?!(もう完成している!)」と感嘆の声がでます。何より、日頃から営業からの情報を熟読されていたとは思いもかけないことで、とてもありがたいことでした。「いつも、きちんと読んでいますよ」に、改めてこちらのモラール(士気)が上がります。さらに「製品化された後で、改造や機能追加というのは対応できない場合が多いのですが、当初から必要なもの、特に使い勝手というのは、予め設計段階で盛り込んでおけば済むことです。いたって簡単なことですよ」と。文系出身で営業の私が「ものづくり入門」かつ「商品企画に関与させて頂ける契機」となった貴重なお言葉です。そして実際に製品化が次々と実現します。
2015_8_31追記
アンリツの開発エンジニアとスクラムを組み、
生まれた商品は「コチラ」と
コチラ」をクリックしてください。
2018_4追記
さらに、【コチラ】は原理上不可能とされていたものを、実現した究極の機器です。

対キーエンスを含む複数のライバル会社との受注競争に際して、最高の機器を用いて、このすばらしいエンジニア部門の方々とともにスクラムを組んで戦えるのは、とても恵まれていて最高の環境です。ブログをお読みの方の大半が同意いただけると思いますが、当時の私は「完全なる勝利」を確信したのでありました。(ところが、そうは簡単にいかないので、後に「競争戦略の研究」を開始しました。ようやく結論を得て、競争局面が多い新規事業を主題に、書籍を執筆するに至ったのであります → 執筆書籍についてはコチラをクリックしてください)。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。