本日は、平成26年(2014年)10月5日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

キーエンスの営業担当者時代、引き合いのあるお客さまに「無料テスト機」の貸出を行うことも重要な業務でした。こちらも「電話の発信件数と通話時間」の評価と同じく、貸出件数が多ければ多いほど営業担当者の評価が高いのです。貸出件数が多すぎるから、そろそろストップしようといったことにはなりません。創業者、滝崎武光氏の「必要な経費は使う」に沿ったもので「例外なきルール」なのです。貸出機器の出荷は、製品と同じく即納も可能だったと思います。在職中、当日出荷を含めて依頼通りに進みました。貸出機といっても受注製品同様に大切に扱われ、受注分でないという理由で出荷を後回しにされるとか、放置されるといったことは絶対にありません(そのような事態は、キーエンスでは大事件です)。かつて歴史上の話題でブログを綴りました。まさに、キーエンスの無制限ともいえる機器を貸し出す販売戦術は、さながらヨーロッパ戦線における、米国の中型戦車の大量投入といった様相です。

ライバルであるアンリツに移って、予想通りではありましたが「貨出機器」の数量には限りがありました。
BtoB(企業間取引)で機器のセールスを経験された方は、機器を貸し出すことが、受注競争の場面で有利になるとおわかりでしょう。では、キーエンスのように貸出機を増やせばいいだろうと考えるのが普通です。ところが世間一般の会社では簡単に進みません。機器を増やすということは、商品が増えること、すなわち会社の現金(キャッシュ)が(貸出機器に化けてしまって)減るということです。そして貸出機器の出荷手続き、管理(棚卸資産として、そして保守点検等)に費用が発生する、どの部門が費用負担する云々で反対されるからであります。この種の反対意見は、販売の最前線からはもちろん、ヘンテコな理屈に聞こえます。ところが誠に残念でもありますが、理にもかなっていて、あながち間違った発言でもありません。営業部門のすばらしい上司や先輩は、もちろん貸出機器の充実に帆走されましたが、私が入社して退職するまで10年超の期間、貸出機器の台数の増加は、ほとんど期待できなかったと思います。同様の経緯で販売競争で不利になり、キーエンスに白旗を上げたライバル会社があったかもしれませんが、こちらはそう簡単に負けるわけにはまいりません。

「貨出機器」の台数に限りがあるなら、無いものねだりをしていても始まりません。それを前提に戦うことが必要です。もちろんその戦術がありました。幸いなことにアンリツの製品は、受注競争する同等品がそう「キーエンスより圧倒的に優位」であったからです。相手方から、大量投入がなされようと所詮は中型戦車、当方は戦えば必ず勝てる無敵の大型戦車を有していたからです。
お客さまが、キーエンスの機器を借りて測定が可能なら、機器の性能が勝っている以上、普通に考えて当方が貸し出す必要はありません。そのまま胸を張って受注できます。すべてのケースでその通りとなりませんでしたが、機器を貸し出さず、高い確率でお客さまにご納得頂き受注できる方法が、いくつかありました。お客さまに訪問して、キーエンス対策も意識して作成した「片面印刷のみのリーフレット」(内容は比較表の類ではありません。受注競争とならない場面でも活用できる提案資料です)1枚の提示・提出のみで勝利する手順もそのひとつでした。当方は、ジタバタする必要がありません。相手方が貸出を終えるまで時期を待って、直後にアプローチすればいいのです。アプローチする時期は正確さを求められますが、いとも簡単に受注できるケースが事実存在したのです。こういう背景からも、当時の私は、対キーエンスを含む販売競争について「完全なる勝利」を確信したのでありました。ところが、(毎度記述していますが)そうは簡単にはいかないのであります(関連記事も是非ご覧ください)。

NEW(2018_1_20追記)キーエンス在職中から、その高い精度で圧倒されたライバル会社アンリツの 商品のひとつ。戦えば必ず勝てる無敵の大型戦車とは、>>>コチラをクリックしてください(外観写真も掲載しています)。

[この場をお借りした SPOT宣伝] ほぼ無制限ともいえる、機器を貸し出すキーエンスの販売戦術は、業界で、いまや広く知れ渡っています。この戦術は、ライバル会社との受注競争に勝ち「売上を上げる最短・最速の手順」であることも明白です。では、何故、キーエンスは「最短・最速を志向」するのか? 即の受注・売上の実現は、即の入金につながり経営が安定・・・と考えるのが普通です。ところがライバルのアンリツに転職してから、この「最短・最速を志向」が、決して表にはでない、キーエンスの経営戦略のひとつであることに気づきました。現代の中小企業はもちろん、企業規模に関係なく新規事業部門において、ニッチ商品の販売に際して、参考となることでもあります。「最短・最速を志向」・・・その広く語られない経営上のメリットについて、近々開催するセミナーの中でお話しする予定です(詳細はコチラをクリック願います)。ご参加をお待ちいたしております。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。