本日は、平成27年(2015年)2月21日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】
土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。
当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。
私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。
キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

前々回より、キーエンスはもちろん、企業規模を問わず業績のいい会社の共通点を記しました。
すなわち3つの仕組みが備わっていると。
[1]売れる仕組み(ルール)がある。
[2]成果を出した、努力した社員にきちんと報いる仕組みがある。
[3]モラル(道徳)、モラール(士気)、パフォーマンス(成果)のそれぞれが低い社員を放置しない仕組みがある。
本日は、[1]について綴ります。
BtoB(企業間取引)・製造業・訪問型営業のビジネス分野で、世間一般の会社と比べ、「一歩」どころか「二歩」は確実に先を行くキーエンス。
好業績の秘訣は「売れる仕組み(ルール)がある」ことに間違いなさそうです。
かつて、キーエンスの社内では「経済原則」による判断基準で物事を進めると綴りました。そのため、ヘンテコな誤解もあると思います。高い利益を稼ぐ会社である故「売るため、利益を上げる為なら、何でもやりかねない会社だ」と。厳しい言い方をしますが、正直言ってこの手の思考は、負け犬の遠吠えです。私がキーエンス退職後、ライバル会社へ就活中に浴びせられた「キーエンスが成長しているのは、ダンピング(値引き)しているからだろう?」と批判めいた質問と同じ類のものです。というのも、キーエンスの売れる仕組みには、必ず「お客さまの利益」が考慮されていて、お客さまに満足を頂いてから、その後に利益を得るといった正しい手順を踏んでいるからです。
例えば、早い段階で構築された仕組みのひとつである「即納」。即出荷する(売上計上できる)ということは、即入金も期待できるという売り手の思惑がありますが、即出荷の原点はお客さまを待たせない、すぐ入手したいというお客さまのご要望に沿った対応なのです。もちろん、お客さま第一の思考は、競争を勝ち抜く戦術でもあります。お客さまの便益を考ているからこそ、高い利益を得られる。これは企業規模に限らずあたりまえのことですね。
キーエンス独特の「売れる仕組み」は、創業者が関与した内容も多いと思います。いまや有名な「即納」「無料テスト機貸出」「修理代替機貸出」「営業担当者がデモ機を持参して訪問する」も該当するでしょう・・・。そして、営業部門以外の部門でもたくさんの仕組みがあります。もちろん「どれも、お客さまが満足される視点」があります。特筆すべきは、これらのキーエンスの仕組みは「全社的に対応する」「例外なくオートマチックに進む厳格なルール」だということです。
1980年後半当時に、そこまで徹底した企業は、業界でキーエンスが初めてだと思います。ライバル会社によっては、全く追随できなかったり、追随するのにも相当の時間を要したと思います。やはり創業者の経営手法は洗練されています。
さて、そのキーエンスの創業者についてでありますが、ここで「間違った創業者像」をご紹介いたします。私がキーエンス退職後ライバル会社に転職し、その後経営コンサルタント(中小企業診断士)として活動する現在に至るまで、自称「キーエンスを大変よく研究した」という方々から、時折り発せられるのが、「おたくのいた会社(キーエンスは)は、経営者(創業者)がカリスマだから・・・」。これには失笑どころか、あまりの薄っぺらさに正直あきれていました。
カリスマ」という用語を使えば、「統計」「情報」「IT」同様にカッコよく見えると勘違いされているようです。
確かに、私自身はキーエンスの創業者の理念や経営方針には感服していました(だからこそ、キーエンスに新卒入社したのであります。同期入社の大部分も同じだったと思います)。しかしながら、キーエンスの創業者がカリスマであることは絶対にありえません。創業者が強く唱える「経済原則での価値判断」では、個人崇拝などは真っ先に排除されます。もちろん、創業者を崇拝する催しなどは全くありませんでした。また、創業者がいくら偉大であっても、創業者ひとりで売れる仕組み全てを構築することは無理です。幹の部分は創業者が、そして枝葉の部分は、経営幹部から末端の一般社員までのアイデアや改善提案で構築されているのです(どこの会社も同じであるはずです)。
実際、私が退職した後、業界初のオールカラーとなったキーエンスの総合カタログを手に取ったことがあります。私が在職中考案した売上を伸ばす販売手法・戦術がそのまま記載されていたのを見て、全社的に対応するさまが見て取れました。
キーエンスの創業者がカリスマでないとすると、このブログをご覧になっている経営者や事業のトップの方は不思議に思うはずです。「自分自身とキーエンスの創業者と、一体どこが違うのか?」、いつも真剣に経営に取り組まれているトップの方なら、一層その想いが強いと思います。
冒頭、キーエンスは世間一般の会社に比べ、「一歩」どころか「二歩」は確実に先を行くと申し上げました。たったいまから、すぐさま横並びに追いつくのは無理だと思いますが、一歩近づくということであれば、さほど難しくないことかと思います(ライバル会社より一歩前進して、差をつけられることを意味します)。
『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。

NEW拙著新規事業の競争戦略 高い利益を獲得するスピード経営』:第2刷、電子書籍:kindle版で発売開始

※Kindle Unlimited 会員の、追加料金なし(¥0)で読み放題にも対応(詳細はアマゾンサイトにて)

amazon.co.jp→【】→ 新規事業の競争戦略 高い利益を獲得するスピード経営 Kindle
で検索してください。
※電子書籍(kindle版)発売に至った経緯は、>>>コチラをクリックしてください。