本日は、平成27年(2015年)5月05日祝日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

以前綴ったブログで、BtoB(企業間取引)・訪問型営業のビジネス分野で、近い将来、二歩先を行くキーエンス級の強いライバル会社が、次々に出現すると予想いたしました。そんな強い会社を相手にして競争となった場合、すぐに横並びできることなど無理な話しで、短期間で圧倒されてしまう危険性があります。そのため、平時のいまから「一歩前進して備える」ことをオススメしているわけです。もちろん、一歩進めることができれば、それは同業の会社に対して一歩差をつけることを意味します。すなわち、競争力が確実にアップするのです。

「キーエンスに依頼すれば、とにかく対応が早い」と体感されている方や、耳にされている方も多いと思います。「クイック・レスポンス」はキーエンスのお家芸でもあります。即対応ができるのは、たくさんの社員で業務分担しているから可能なのだろうと考えるむきもあるでしょうが、そこだけは違います。
1987年4月、私がキーエンスに入社した初日のことです。創業者の講話で、いちばん最初に話されたのが経営理念。「最小の資本と人で最大の経済効果(=付加価値)を上げる」と説明されました。今も印象に残るフレーズです。今回は、「最小の人員」でクイック・レスポンスを可能とするキーエンスの強みを語ります。

キーエンスの営業所で勤務していた当時を回想すると、営業担当者それぞれによって、仕事の成果(営業部門なら売上実績やプロセスの実績)にバラツキがあっても、日々の業務の負荷のバラツキは、ほとんどなかったと思います。さらに言えば、営業部門を含めて全社員がほぼ同じ負荷。実際に、全従業員が日々例外なく残業をこなし、退社時間もほぼ同じだったと思います(但し、何度も綴っていますが、徹夜や休日出勤は皆無)。
最小の人で回す為、会社の成長にともない残業が必要となります(どの部門でも残業代は全額支給)。そして更なる成長の為には、増員が必要なのですが、創業者は、ひとりあたりの業務負荷がほぼ同じになるよう、各部門の人員の構成を細かく配慮されていたのだと思います。

社員ひとりひとりの業務負荷にバラツキがなく、しかも全員が残業をこなす。まさに強いチームの典型です。キーエンスの営業は、キツイとされていますが、営業担当者を支援する体制は、間違いなく充実しています。そのバックアップ体制そのものが、営業担当者のモラール(士気)向上に寄与していたのは間違いありません。関連するエピソードを綴ります。私が直販営業として勤務していた頃の回想です。
営業部門へのサポート
お客さまより、技術的に高度な質問を受ける場合があります。手元の資料を調べてみたり、販売グループの先輩に伺っても難解・・・ここで、営業をサポートする部門に電話で問い合わせをしますが、担当者は営業部門と同じく、19時であろうが20時台であろうが、残業にて確実に対応します。結果、お客さまが必要とする情報は営業担当を経由して、お客さまに即日(あるいは明日までには)回答が出せる場合がほとんどでした。
受注分の出荷
全員参加の夕礼が終わって残業中の19時頃。お客さまより、測定機器の複数台一括のご注文を頂いたことがあります。当時の当日出荷締切り時間を過ぎていますが、即納のキーエンスでは、自動的に明日には確実に出荷されます。ただし、この機器の複数台(大口)一括出荷には、電話で本社の担当者に事前問い合わせが必要でありました。入社一年を経過した頃、本社を見学した際に、この機器の最終調整(アナログ機器の宿命)が非常に大変だと理解していました。
さらに、お客さまのご意向である「1ヶ月程度はお待ちしますよ」(納期に余裕もある旨)を本社担当者に伝えました(もちろん、キーエンスでは月次の営業予算管理。営業担当者は今月分として出荷、売上計上したいのが本音ですが・・・)。
対して、本社の担当者は「いまから作業にかかり、必ず明日に全てを出荷します」との回答。「(月の締切日は、まだまだ先でもあること)、無理しなくてもお客さまが期待されている納入期日に余裕がありますから」と重ねて申し上げたのですが、「のんびりしていると、後日さらに注文が殺到すると一層大変になります、順次早めに済ませたいのです」と力強い回答。
「大変なところありがとうございます、よろしくお願いいたします」に対し、「いいえ、営業はもっと大変なのですから、こちらに気など遣わずドンドン注文をもらえるよう、がんばってください」。
そして有言実行、翌日に全式出荷となります。もちろんお客さまに連絡をした途端、「エッ?もう出荷して頂いたの?!」と思わぬ対応に大感激されます。

お客さまからの依頼(問い合わせ、注文等々)に対して、全社の連携で即時に回答・結果を出す。これは世間一般より二歩進んでいるキーエンスの強みのひとつです。
一方、みなさまの会社ではいかがでしょうか?
二歩遅れた会社では、「クイック・レスポンス」は口先だけのスローガン、あるいは経営者だけが自己満足しているフレーズどまりです。業務の分担が不明確、そして、組織ごと個人ごとの業務負荷が極端にバラついています。連携どころではありません。結果、お客さまを待たせることとなり、強いライバル会社との受注競争に勝つことは絶望的となります。
その厳しい競争局面に遭遇した場合、従業員の中には自ら進んで、他部門の業務を抱え込んで対処するといった方もいるでしょう(いわゆるスーパープレーヤーの存在です)。会社にとって、スーパープレーヤーの存在は頼もしい限りですが、ひとりあたりの業務負荷のバラツキは、いずれは全体のモラール(士気)に影響を与えます。ある日突然、スーパープレーヤーが流出するというリスクもあります。
(個人的感想ですが、キーエンスでは、野球でいえばホームラン王、サッカーでいえば神業となるフリーキックができる、いわゆるスーパープレーヤーを必要としないと思います。求められるのは「全員例外なく」、野球では確実に送りバントができること、ゴールキーパーと1対1のPKを確実に外さないレベルを求められるはずです。一見簡単なようですが、「例外なく全員ができる」というのは会社組織では難しいことだと、おわかりになると思います)。

ところで、世間一般の企業では、社員全員が21時台まで残業するということは現実的に難しいと思います。そして意外なことなのですが、仮に社員全員が連日遅くまで残業しても、キーエンスのように好業績とはならない場合がほとんどです。お気づきの通り、労働時間という量とともに重要な質(効率)を上げることが重要だからです。キーエンス級の会社に一歩近づくには、まずは量より効率を上げることが優先です。ところが、その効率を上げる手法についても、勘違いされている場合が多いと思います。実のところは、経営トップが真っ先に理解して実行する手順があるのです(拙著にそのヒントを記載しています)。

「ある日突然、キーエンス級の強い会社がライバルになった時、対処できますか?」

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