本日は、平成28年(2016年)9月28日水曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス社員、中小企業診断士の立石です】

本日は、みなさまの会社が「本当はできるはずのこと」です

前々回より、主に工場で実践される、有名な合理化の3S(英語の頭文字がすべて「」です。)をお題に綴っております。
Simplification 単純化
Standardization 標準化
Specialization 専門化

Simplification 単純化の話題に続いて、順が変わりますが、今回は
Specialization 専門化について語りたいと思います。
もちろん、工場での話しではありません。飛躍いたしますが会社組織の話題です。

会社組織で『専門化』といえば、「分業」を連想されることかと思います。
【営業】【技術(開発・設計)】【製造】【経理】etc・・・といった専門化された組織、
いわゆる『機能別組織』といったものでしょうか?こういった組織形態は、相当数の企業でも採用されていて、特に中小企業では、ごくあたりまえのことだと思います。

こういった組織形態は、うまく回れば効率的に業務が進みます。一方、専門化した組織には、デメリットがないわけではありません。セクショナリズムというのでしょうか?【お客さまの直接窓口ではないので、我は一切関知せず。所詮は他人ごと】といった思考です。その悪しき思考が、営業部門では当たり前である「お客さま第一」に反する行動につながるといったリスクも存在するのであります。結局のところ、組織形態の良し悪しはフレーム自体より、そこにいる『人の質』に依存することに間違いなさそうです。

私が勤務していた当時のキーエンスでは、複数の事業部があり、各事業部ごとに分業(『専門化』)を目的とした機能別組織が存在していました。非常に稀なことでしたが、世間一般の企業と同様、『人』(正確には、各担当者の意識のバラツキ)に起因するデメリット(お客さま第一に反する思考・行動)が全くなかったわけでありません。当然のことですが、企業組織では、発生するはずのことだからです。
ただ、キーエンスが世間一般の企業と違うところは、前回のSimplification 単純化で綴った内容と同じく、人による問題が発生した際、追加のコストをかけずに、即時にリカバリーされることです。改善まで『猛スピート』で『ひとりでに』に進むのであります(ケガをしても、高速で自然治癒する。そんなイメージです)。つまり、キーエンスの機能別組織は、専門化のメリットのみが享受される組織であったのであります。

直販営業部門にも専門化を導入したキーエンス

キーエンスの営業体制が、ユニークだとされている理由のひとつが、 誰もが知る『直販』です。キーエンスの直販は、正確には中間業者が介在することとなっても、ユーザーを必ず直接サポートするスタンスであります。直販が、他社に比べ優位なる一例は、コチラコチラをクリックしてください
そして、もうひとつは、専門化した営業担当者による販売体制を構築していることにあります。既に綴りましたが、私が新卒入社した当時(1987年:昭和62年)のキーエンスは、事業部制を採用していて各事業部に、それぞれの専任営業部門を配置していました。入社した頃は3っの事業部。即4っに増えた記憶があります。事業区分は、おおざっばに言えば価格帯(製品群も一致する)による区分、その後の成長段階は、自身がキーエンスを退職した為、外部からウオッチすることになるのですが、製品群による事業部(主に高付加価値商品)が増えていったのだと思います。有価証券報告書では、そのセグメントを公開されていないようです。そのため、あくまで私見となりますが、現在では7事業部ほどが存在しているのではないかと推測しています。

企業は成長とともに、キーエンスのように取扱う製品群が増えていく場合があります。それにつれて事業部制をとることも当然です。
ところが、キーエンスのように【原則直販】を選択して、全国的に販売拠点(営業所)を設置する場合、営業体制をどのようにするか、経営トップとして、難しい判断を迫られるシーンが必ず訪れます。

ひとつは、一般的な手法
各営業所の担当者に【自社製品であればどの事業部の商品でもいいから販売担当させ、とにかく売上を伸ばす】という方針。

そして全く別の手法。
キーエンスのように、各営業所に事業部別に専任の営業担当者を置くこと。いま現在のキーエンスの大手たる企業規模なら、納得できる販売体制でありますが、私が勤務していた当時、営業の現場で懸念する声も少なからずありました。それは、すべてのお客さまに複数の営業担当者の窓口が存在する点であります。入社してほどなく4つの事業部が存在、つまり4人の営業担当者が存在するという意味です。総合カタログは一冊、しかし商品によって営業担当者が異なるということです。営業担当者(窓口)が【ひとり】のほうが、お客さまにとっても混乱もなさそうですし、販売側も人員配置の観点では、効率的なのは間違いなさそうですが・・・
結果、キーエンスの選択した、当時は異例ともいえる販売手法のおかげで、みなさまがお知りになっている通りの好業績につながります。キーエンス創業者の方針には、いまもって脱帽するほかありません。本当はみなさまの会社でも導入できるはずのことなのですが・・・(つづきは次回に)。

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