本日は、平成29年(2017年)11月09日木曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス社員、中小企業診断士の立石です】

今回もズバリ、創業まもない中小企業の経営者の皆さま、
そして大手企業の新規事業部門の責任者の皆さまへ、
製造業専門の経営コンサルタント(中小企業診断士)として語ります。

増員に際して「新卒者を採用する意味合いについて」の話題です。
新卒者は、経営者と同じ意識を持つ可能性が高いと言えそうです。
企業経営者の皆さまにおかれましては、「スキルの中途採用」とともに、
新卒採用もバランスよく実施されて、会社を成長させて頂きたいものです。

企業の成長に伴い、変わりゆく採用の手法

キーエンスの営業担当者。時代とともに変遷します。
1<中途採用(学歴問わず)>

2<大学・新卒者>

3<偏差値の高いとされる大学・新卒者>

4<桁外れの超難関大学・新卒者>・・・いま現在のキーエンス
以上は、成長企業の推移として、一般的な流れだと思います。

営業部門において、短期間で成果をだす即戦力なら、
上記1のステージである、中途採用者のみによる増員が妥当です。
何度も、綴りましたが、私が入社する2年前(1985)の
営業担当者は、オール中途採用者で構成されていたと思います。
では、即戦力にならない新卒者を、何故採用するのか?
人事の責任者から、私の1年先輩にあたる1986年の新卒大量採用の実績を
踏まえて、「(中途採用者に比べて)定着率が高い」との、お話しがありました。
ただ、そのこととは違う方針もあるはず・・・
ここからは、私の回想と私見ですが、創業者の強い信念があったのだと思います。

行動指針の理解度で読み取れる、創業者と同じ考えを持つ人(バラツキの無い新卒者)

キーエンスに新卒入社された方なら、退職後も「行動指針」を正確に口にだせると思います。
◆(▲▲意識)仕事は責任を・・・(以下略)
◆(〇〇意識)その仕事は何の・・・(以下略)
◆(■■意識)仕事のやり方が・・・(以下略)
私もそのひとりです。トータルでわずか100文字程度ですが、
不思議なことに、30年たった現在でも句読点も含め、一字一句正確に綴ることができます。
内定を頂いた1986年。確か現在の紅葉の時期に、内定者全員参加の一泊研修プログラム (実は親睦旅行?というイメージ)がありました
(その後4月1日入社まで、行事は一切無し)。

研修当日、参加者全員に対して、引率される人事責任者と担当者から指示がありました。
「行動指針は、絶対に丸暗記してください。4月1日の入社日に筆記テストを行います」と
(これは、創業者の方針に違いありません)。
そして4月1日入社初日、同期入社40数名全員が筆記テスト合格(完璧)。
どの企業でも、入社直後の新卒者は、緊張感もあってか言われたことを忠実に実行します(これが新卒者の特徴・強みです)。
中途採用者には、前職の会社での経験や教育等の環境によるのでしょうか、
考えにバラツキがあるのも事実です。
当時のキーエンスでも、同様であったようです。
私が入社した後、グループリーダー(当時は中途採用者のみ)の集合研修で、
創業者から「行動指針」について質問された方が、暗唱していなかったようで、
リーダーを更迭(降格)されたという話しを聞いたことがあります。
この1件について、
周囲の先輩方は、「厳しい」と口ずさんだり、
あるいは集合研修前に、あわてて行動指針の暗記に再トライされたりと
なんだか騒然としていたような・・・
もちろん、当時の先輩方に直言などできませんが、
我々新卒入社のメンバー同士で語られていたのは、
「わずか100文字程度の行動指針を覚えていない?信じられない!」
「(創業者の)滝崎さんが策定された行動方針を答えられないなんて、
社員として絶対ありえないこと」なんてことを、真顔で話していた記憶があります。
これを「洗脳の結果」とおっしゃる方がいるかもしれません。それは違います。納得してきちんと理解していただけのことです。
何度も綴りましたが、キーエンスの創業者は自身が「カリスマ扱い」されることを、誰よりも嫌っていました。
「仮に、自身がいなくても会社がうまく機能して回る手法」を、模索されていたのです。徹底的に考え抜いた結果、その方策のひとつが、全社員が「行動指針通りにふるまうこと」なのであります。
キーエンスの行動指針は、現在のブラック企業の経営者が考えつくような
独善的なものでなく【企業の成長には、誰もが正しいと納得できるもの】で
ありました → 運用の一例は、コチラをクリックしてください

円高不況が採用の追い風に

私が就活していた1986年夏。プラザ合意の円高で、対ドル240円がみるみるうちに→180円→150円・・・。企業の生産は、日本国内が主流(業績に直撃)。
大手電機を志望した学生は、ほぼ全滅。
この年に、一流ホテル(大広間)で、キーエンスの創業者自らが登壇する会社説明会。現在のような高い報酬でもない、フツーの中小企業です。
何度か説明会を実施した後、新卒予定者1600名程度が適性試験に応募したとのこと。
母数が多いほど、会社側からは「自由に選び放題」といったところです。
当然のことながら、創業者の最終面接を受けて採用されています。
就活で、さんざん苦労した当時、採用して頂いた創業者に対して、
ほぼ全員が、ある意味で忠誠を誓っていたと思います。

そして、創業者の期待に応えるように
1986年度から大量に採用された新卒入社組(営業担当者)の
貢献度合いは、非常に高いものとなります。
厳しいながらも1年経てば一人前、2年目には中途採用者の先輩以上の成果を出す・・・
キーエンスに新卒入社する面々は、創業者にとって思い描いた
まさに【人財】となったわけです。
その当時の業績ですが、

上記グラフの通り、全社売上高の規模は、現在の売上高とは比較にならないのですが、
対前年度の伸び率については、すさまじいものがあります。
具体的には、
私が入社した1987年度の全社売上高 対前年比139%
1988年度の全社売上高 対前年比145%
こういう結果からも、以降の採用は新卒者にシフトすることが
確定したと思います。

この当時、急成長に対して増員が追い付かず(実際は退職者の補充?)、
中途採用も継続していました。
ところが、【創業者との面接無し】で入社される方も、事実として
いらっしゃいました。
また、定期的に実施される集合研修において、新卒者対象の研修では、
冒頭に、必ず創業者の講話のプログラムがありました(研修講師の同席は禁止)。
但し、我々新卒入社組が、その場で「行動指針」を尋ねられることなど、
一度もありませんでした(初日の筆記テストの結果で、新卒の諸君は全員理解しているものだと、判断されたのでしょう)。

営業所の先輩に、研修内容を話したところ、
「えっ?毎回、滝崎さんの講話があるの?
俺ら中途の研修には、〇〇さん(営業のトップ)しか来ないよ」・・・
【余談】
直近の有価証券報告書を眺めていると、生年月日と入社年度から
役員は全員新卒者だと想定できます。
キーエンスは学歴等を一切考慮しない実力主義の会社ですが、
この一面だけは、世間一般の会社と同じなのかもしれません。