本日は、平成30年(2018年)2月1日木曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス(→アンリツ)社員、
中小企業診断士の立石です】

直近のブログ記事のテーマは、私がキーエンス勤務時代、
その高精度に圧倒された、アンリツの光マイクロ(KL130A)の回想を
綴りました。
※(いわゆる、レーザ光を用いた非接触変位計である)光マイクロ®は、
アンリツ株式会社の登録商標であります。
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当時、ライバル他社を圧倒する、高精度の機器であることには
間違いなかったのですが、それでも課題がありました。
センサヘッドを小型化するということです。
下記のセンサヘッド写真は、
光マイクロ 総合カタログ CAT.NO.46368-2からの抜粋・引用となります。
photo:カタログP2頁より抜粋

ご覧の通り、手のひらに乗るサイズなのですが、「三角測量方式」である為、
高精度を維持するには、小型化にも限界があります
(さらに小型化すれば、精度が格段に落ちます)。

お客さまからのご期待。
アンリツなら可能になるのでは?

『ストローのような、極細の形状にならないか?』というお客さまの要望。
それは、アンリツが光マイクロを開発した1974年以降から、
多々存在していたと思います。
そのニーズに対して、それまでのアンリツが対応しなかったのか、
対応できなかったのか、その経緯は、
キーエンス退職後、アンリツに途中入社した私には、
把握できないことです。
ただ事実として(本当にありがたくも)、
その小型化実現にむけて、私が戦端を切らして頂いたのであります。

偶然の電話受け

1990年代前半の夏休みだったと思います。
当時のアンリツは、一斉休暇でありましたが、
本人の希望で、一週間ほど前後しての休暇取得もできました(とてもありがたい!)。
この仕組みは、キーエンス勤務時代とは異なり、誰かが職場にいるので、お客さまに即時対応できるわけで、理にかなっていることでもありました。
当時、その制度を利用した私。
出勤したのが『旧盆』の時期。
連日のような電話は鳴らず、事務処理やら
作戦検討(メインは勿論、対キーエンス作戦)に集中していました。
そんなさなか、一本のお問い合わせ電話がありました。
光マイクロが『ストローのような細い形状にならないですか?』。
至急の打合せ希望、お招きを頂きました。
フツーは、無理だという常識の下、
『丁重にお断り』に進むはずです。

当時のアンリツの営業部門では、キーエンス勤務時代のような
終日・たくさんお客さまへ訪問するルールとは異なり、
優先順位を考えていれば、出社後の1件訪問も有りでした。
そんなわけで、当日夕方に訪問することにいたしました。

お話しを伺っていると、
私は、『技術のアンリツなら開発できるかも?』というイメージを持ちました。
というのも、全体を小型化にする必要が無いという前提があったからです。
何よりも、お客さまが
ある専門用語を口にされたので、大変興味を惹きました。
それは、法令やJIS等の規格の用語とは無縁なのですが、
アンリツに勤務してから知り得た、ある用語です
(個人的に、非常に気になっていたことです)。
この用語を知らなければ、前に進むことはなかったはずです。
製品化にむけ、この用語を深く理解する為に、技術論文を入手したり、
有給休暇を取得して、国会図書館にも足を運びました。
さらに、全国のあちらこちらのお客さまに訪問面談他、
独自に市場調査も実施いたしました。
キーエンス勤務時代とは異なる、『夢中になる毎日』であります。

そして、このストロータイプの光マイクロが、実際に製品化に進みます。
製品化(量産品)できた理由は、
・アンリツの強み(基礎研究に注力する)が、偶然にも応用できたこと。
・開発・設計のエンジニアが、超・超・超・優秀であったこと(アンリツには【光学設計の神さま】が、あまたいました ⇒これこそが『真のハイテクエンジニア』だと思います)。
・(以前登場頂いた)直属の営業部長が、「常に考えて行動する方」であったこと
:市場性(確実に伸長)について、瞬時(秒殺)に理解され、後押しして頂けたこと。

『ストロー』の幅は10mm(1㎝)を
更に下回る・・・


バージョン1は、まさにストロー2本を並べたタイプ
(1本からレーザ光を放ち、もう1本で受光:三角測量タイプ)
それでも、さらに小型化のご要求があったので、
上記のリーフレットの記載通り、1本のストローのタイプに進化します。
もちろん、レーザ光の投受光を1本でこなします。
そのストローの幅は、限界とされた10mm(1㎝)を更に下回りました。

命名させて頂いた:ピンタイプ光マイクロ

製品名は、○○○○光マイクロになります。
その、○○○○の部分には、『ストロー』や『先細形状』等々が検討されます。
先細は、業績が先細りというイメージで縁起が悪い(笑)・・・
私は、かねてより高級なネクタイピンとクロスさせていました。
スリムだけど頑丈(製品として力強い)イメージです。
そこで【ピンタイプ光マイクロ】に、押し切らせて頂きました。
その後から現在まで、
いわゆるレーザ光を用いた非接触変位計(三角測量方式)の分野で、
ライバル会社が、このスリムタイプを投入したという情報を、
耳にしたことがありません。
オリジナル&ハイレベルの方針下、当時のアンリツの卓越した技術力が、
他社の追随を許さなかったのでありましょう。

最強の製品群

当時の光マイクロは、第二次大戦中の戦車に例えるなら
その性能からして、ドイツの最強戦車『ティーゲル(タイガーⅠ)』で
あると綴りました
(その関連記事は >>>コチラをクリックしてください)。

更に進化した、このピンタイプ光マイクロのセンサヘッドを
横に寝かせると、戦車の砲塔のようですね(笑)
ピンタイプ光マイクロは、さらに強力な大砲を装備する
『ティーガーII(キングタイガー)』。
そんなイメージです。
前回綴りました【進化する光マイクロ®】、
ついに、オリジナル&ハイレベル商品が揃いました
(公開したリーフレットの作成は、後年なのですが)。

試合に勝って勝負に負ける?
いわゆる【失われた勝利】

このピンタイプ光マイクロ完成を持って、
お世話になった先輩に続き、私が異動することになりました。
新商品の企画業務の兼務は、しばらくお休みです。
異動先の課題は、とにもかくにも売上高伸長です。
赴任当初は、全くどうにもならない状況でしたが、
対キーエンスとの受注競争を経て、
それには、十分にお応えできました。

当時の私の正直な感想。
私が異動する1年前、番頭格の先輩がいらっしゃったメンバーのままで、
あと3~5年の時間があれば・・・
おそらく、全ライバル会社との競争で
アンリツの完勝が、実際にかなうと。
でも、その考えは正しくありません。

そして、誠に残念ですが、どういうわけか
その後は【失われた勝利】という言葉が、
現実味を帯びていきます。
わかりやすく表現すれば
『試合に勝って勝負に負ける』という事態に
直面していくのであります。