本日は、平成26年(2014年)6月07日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

東京は梅雨入り。やや肌寒いですね。「猫の恩返し」の続編、お待たせしております。いましばらくお待ちください。

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスに関連する話題・体験談です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

再就職にむけて、キーエンス退職直前から日曜日の朝刊に掲載されていた募集記事を見て、いくつかの会社に書類の応募をしていました。そして1989年7月。退職直後に経済関連の文章を書くアルバイトも始めましたが、すぐに面接のみの毎日となりました。複数の大手電機メーカーの面接も受けましたが、キーエンスとは畑違いの機器の業界では、当時売上高が150億円弱のキーエンスを全く知らないという会社もありました。それでもいくつかの会社では最終面接に進みます。以前綴ったのですが「キーエンスと同業の基本的なセンサ」の某ライバル会社の説明会に出向いたりもしました。ところがその説明会では、相手担当者からキーエンスに対する批判というより「恨み節」を浴びせられたので、私はその場で声を出して失笑。「失礼します」と強制的に中断して席を立ちました。こういうタフさもキーエンスでの成長のおかげでしようか(笑)。こんな腹に据えかねる会社説明会は、もうコリゴリなので、同業の会社に行くのはウンザリだなと思いました。

そんな折、当時のキーエンスが強敵としていた会社のひとつが、新聞広告に中途採用の募集を掲載していました。どうせ不合格となるでしょうが、どれくらい評価されるのかという思いもあって応募しました。ほどなく、採用試験を実施するので来社して欲しいと連絡がありました。この会社は間違いなくキーエンスからの採用実績がある会社です。まず筆記試験がありました。たくさん人がいたのですが、技術系の中途採用の方がメインだったと思います。実はこの会社、学生時代の就活中に第一志望とした会社です。不合格になってキーエンスに入社した経緯は以前のブログで綴りました(今回は続編です。大変長らくお待たせいたしました)。筆記試験では、不思議なことに3年前と全く同じ問題が出題されました。どこを間違えたかも完璧に覚えていましたので、3年前と同じ点数となるように答えを書きました(果たしてこの会社。人物本位で採用するか否か・・・意地悪と解釈されても仕方のない意図です:しかしながら、堂々と抗弁できます【3年前に不遜な態度をとったのは、どちらでしたっけ?】と)。

人事の責任者を含む2名の方と面接に至ります。率直な所感は、人物を見るという面接ではなく「相手を馬鹿にしている?」全くくだらない質疑応答時間でした。まず、開口一番のご質問にはドギモを抜かれました。「あなたは、キーエンスのライバル会社の当社に転職することに問題あると思わないのですか?」批判されるような口調でした。

思わず心の中で(「?はてな?。キーエンスから採用された方がいるはずなのに・・・」)。折衝力が学生時代のスキル程度なら、しどろもどろになったでしょうが、いわゆる「圧迫面接」の質問にもキーエンスの営業経験でしっかり対応できます。本質に気付けば簡単ですね。ズバリ「問題があるのなら、何故書類選考で不採用とせず、わざわざこの場に呼び出しているのか?」ですね。ストレス質問を与えて反応をご覧になっているのでしょうか?。それも採用試験の手法であります。(「問題あるなら面接に呼ばないでください。一体、何の目的で招いたのですか?」)と返したいところですが、冷静に「ライバルとされる会社に就職することについては・・・・の点に留意して(中略)・・・ということであれば法的に問題はないと思います」。ただ質問された内容の稚拙さと、面接官の無礼ともいえる話し方に嫌気がさして、真面目に回答していることが、正直バカバカしくなってきました。それで続けました「ただし、御社に入社して問題があるようでしたら、こちらとしても転職後のトラブルは本意では無いので、いますぐ帰らせて頂きます…」と言い放ちながら、ゆっくり席を立ちました。すると、あわてて制止するように「いやいや、その通りです。問題無いと思います」と返答されました。

そして、当日最高レベル(笑)の質問です。「立石さんは、3年前の新卒採用時に当社を受験されていますね、しかし残念ながら不採用となられていますよね・・・何故、不採用だったと思いますか?」(予め答えを用意しての追及質問?当時の体をなさない「最終面接」で、不採用の理由など、通知されていない当方がわかるはずなどありません。こういう場合は、答えを知っている側から提示するのが会話の基本ルール。そんな常識、10代の学生さんでも心得ていることです)。表情や口調は冷静を装いましたが「不採用になった理由ですか?その答えはこちらが是非伺いたいです」と言い切りました。キョトンとされたので「当日の役員面接はいまも鮮明に覚えています。相手の方がこちらに視線を一切向けず、後ろ向きの姿勢で私の志望動機を聞かれた後、何の質疑もなく終了でした。当時の状況で私が不合格になる理由が全くわかりません」(人事の責任者もあきれてしまう、その役員の学生に対する対応は初耳だったようです:笑)。すると、人事の方が隣の部屋を指さされて、恐縮された口調で「それは失礼いたしました。実は、その役員が本日来ておりまして最終面接を行います・・・」。その瞬間、とても愉快な気分になりました(不思議な会社だな:笑。でも、新卒採用で不採用にした人物に、最終面接を実施するだけ懐(フトコロ)が深い会社なのかな?それとも、キーエンスに勤務していたことで再評価されたのか?・・・)。

待機の部屋に案内されて数時間経ちました。待たされている間、ここに来たのが間違いだと思い始めました(本当にキーエンスのライバルに値する会社なのか?)。シビレを切らして、帰ろうという気分になったそのときに呼び出しを受けました。いよいよ最終面接です。ここからは学生時代の面接試験と全く同じです。先ほどの人事の方が「まず、ノックをしてからお入りください。指示があると思いますが、当社を志望した動機を1分以内程度でお話しください」。 ただ今回は小声で、「今度はきちんと正面を見て面接いたしますので・・・」。3年前とは違う対応を期待できるようです。(3年前と同じく、こちらに背を向けておられたら耳元まで近づき、志望動機を大声で叫んだ後に即帰ります!:笑)帰るのは、とりあえず相手のお顔を拝見してからでもよさそうです。

そしてお部屋をノック…「どうぞ」の声。確かに3年前の様子と違って、今度は広いお部屋。私の真正面に、ちょうど机ふたつの向こうに、おふたりが並んでおられます。おふたりなので、前回対応頂いた方がどなたかは不明です(なるほど、その手があったか!:笑)もちろん、そんな過ぎ去った話題を持ち出すつもりもありません。志望動機を述べた後に、双方真摯に30分位質疑応答しました。しかしながら、キーエンスの創業者が面接の際に、相手に対して先入観無く真摯に臨む姿勢とは格段に違います(この会社の採用基準、きっと人物本位では無いな・・・)後日、内定を頂けたのですが、残念ながら内定が出た頃には他社への就職が決まっていたので、連絡を受けた時点で即辞退いたしました。

この面接の直後、再就職活動で手元に残った履歴書一枚の処分に悩みました。当時主流の手書きで丁寧に書きあげたものなので、捨てるのもモッタイナイ・・・。複数の会社から内定がでていたので、もう応募したいと思う会社も尽きました。前述のライバル会社の面接の直後、ふとキーエンス時代に自身が本当にライバルとした会社、むしろ憧れた会社を思い出しました。「ライバルながら惚れ惚れする機器を開発・販売する会社」です。技術系のエンジニアの比率が高く、おそらく営業という文系出身の分野で中途採用の募集などしているはずなど無い・・・。実際に募集広告も見たことがありません。キーエンス時代にライバルの研究としてカタログをよく眺めていましたが、さすがに本社の住所は記憶していません。近くの図書館に行って、上場企業の会社情報の類から住所を調べました。そして無礼にも、事前の連絡を一切せずに、履歴書と職務経歴書等を郵送で一方的に送りつけるという暴挙にでました。「最後の履歴書」を使うことで再就職の活動に区切りをつけるつもりだったのです。ところが、驚いたことに「いちど来社して頂きたい」というご丁寧な連絡を受けるに至りました。本当に驚きました。キーエンス時代に、その製品力の高さに「そのショック」を徹底的に思い知らされた会社からのご連絡です。

当時の売上高がキーエンスの約6倍。1000億円企業を目の前にした、BtoB(企業間取引)の分野では誰もが知るハイテク企業。他社の追随はしないオリジナル製品を開発・販売する会社。そのアンリツ株式会社からのお招きを受けるに至ったのです。(この記事のつづきのブログはコチラをクリックしてください)。

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