本日は、平成26年(2014年)4月12日土曜日

【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

私が勤務していた当時のキーエンスでは、取引先との「接待」はゼロ。これは真実です。私はもちろん、取引先と飲食している営業担当者の存在など、ウワサですら聞いたことがありません。まず、会社の方針として饗応(きょうおう)は禁止されていました。「資材購買部門が接待を受けることは禁止」というのは、どこの会社でもあるルールですが、キーエンスでは営業部門でも、接待というものが本当に無かったのです。会社説明会で創業者が語った通り、営業担当者はその時間を「勉強」に使っているのです。

営業所に配属された新人が、メインに勉強するのは「自社の製品」と「ライバル会社の製品」です。キーエンスの販売スタイルは、実際に機器を利用する工場や研究所に、代理店を通さずに直接サポート・直販(直接契約で販売)が基本です。営業所に配属された新人は、先輩をお客さまに見立てたロールプレイングを繰り返します。夏には4月新卒入社の営業担当者全員が、独りで機器をお客さまに訪問持参し、PR訪問できるようになります。その後も新製品の勉強、効率的な販売方法の研究など、販売グルーブ全員で月に数度は勉強会を開催していた記憶があります。

工場や研究所むけの技術的な機器を扱う業界では、お客さまから「製品の規格や性能等」について、カタログに記載されていない専門的で深い内容の質問をされる場合があります。当時、顧客窓口が代理店・取扱店の営業担当者の方なら、「メーカーから直接回答するよう依頼しておきます」となります。そして、メーカーの営業担当者経由で技術担当者から電話等で回答されるのが、一般的でした。専門的な質問に対して、取扱店にしても、メーカーにしても、営業担当者の役割は「中継」というイメージですね。もちろんこの流れでも、お客さまが知りたい情報を得ることができるわけですから、十分な対応です。一方、キーエンスでは、直販窓口の営業担当者の段階で自己完結することが要求されました。本当に「後が無い」のです。もちろん、難解な質問には、営業担当者をサポートする部門がありましたが、営業サポートの担当者が営業担当者に代わって、お客さまへの電話連絡や、営業担当者に同行訪問して回答するということは皆無でした。「お客さまへの回答は営業担当者が行う」が原則でありました。いわゆる「他人任せ」にしないために、都度知識が深まっていきます。新人も時間とともに、お客さまからの質問に即座に回答できるようになっていきます。

また、受注競争に勝利するために、ライバル会社の製品も勉強します。価格(希望小売価格、実勢価格)、性能等を徹底的に研究するのです。結果、ライバル会社製品のカタログ記載内容について、相手方の営業担当者より、キーエンスの営業担当者のほうが熟知しているという、ヘンテコな現象も時々ありました。こうなると受注競争では圧倒的に有利になります。いまになって回想すれば、キーエンスのライバル会社には、営業担当者のスキルにバラツキがあったと思います。(但しすべてが弱いのではなくて、キーエンスより優秀な手ごわい方もいれば、全くそうでない方も存在する・・・すなわちレベルに「相当な幅」がある印象でした)。一方、キーエンスの営業担当者のレベルのバラツキは、(皆無とは言い難いですが)非常に小さいのです。勉強会の効果は計り知れません。

私が勤務していた当時、新卒者はもちろん、中途採用で入社された方も、キーエンスの営業担当者のほとんどが文系大学の出身です。理系出身のセールスというのは、ごく稀だったと思います。それでも全営業担当者が、工場や研究所の専門職のお客さま相手に、直に対応できる知識を身につけます。これは、創業者による環境整備の成果と考えていいと思います。というのも、勉強会はすべて残業時間に行われましたが、会社説明会で創業者が話した◆接待は行わない。その時間を勉強に費やしている。◆残業代は、研修や勉強会を含めて全額支払う…この徹底された方針が背景にあったことは間違いありません。

もちろん、勉強しなければ、営業担当者自身がお客さまへの対応ができず、ライバル会社との受注競争にも敗れることにつながり、売上予算目標の達成が見込めません。不勉強については、本人が一番猛省することとなります。キーエンス入社後の勉強については、頭がいいとか、偏差値が高いとかはほとんど関係なく、本人の努力で十分対応できるはずです。私の知る限り、勉強についていけないとか、回避して落伍していく営業担当者は皆無でした。

『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。

追記【接待交際について】。接待交際をすべて悪という見方は、偏っていると思います(事実、転職先のアンリツで「人脈づくり」に役立ちました)
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