本日は、平成26年(2014年)11月9日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

いまや広く普及した携帯電話。思わぬ故障の際、修理期間中に「代替機」を貸し出すサービスを経験されている方も多いと思います。BtoB(企業間取引)の分野で、この代替機を貸し出すサービスを、既に1980年代に確立していたのがキーエンスなのであります。
キーエンスに在職していた当時、販売戦術のひとつに「即納」がありました。「受注分」はもちろん「無料テスト機」、そして故障が生じた際の「修理代替機」の即日出荷です。当時、当日出荷を行う場合、営業担当者から本社出荷部門へ依頼する締め切り時間というものが当然ありました。締め切り時間までの依頼分は、事前連絡など一切必要なく、まさに自動的に当日出荷されます(処理が放置される・出荷されないなどのミスは、絶対ありえないことです、もしそんな事態になれば、キーエンスでは大事件となります)。その即納の仕組みの中で、受注分より遅い時間まで当日出荷の締め切り時間が設定されていたのが「修理代替機」の出荷だったのです。当時のキーエンスは現地修理をおこなう、いわゆる出張するサービスマンを配置していませんでした。修理は本社のサービス部門で実施。修理期間中のお客さまに、ご要望があれば代替機を即納で出荷する体制を構築済であったのです。「売りが最優先」のキーエンスではありますが、「売り上げること」より「修理対応」が優先されていたわけであります。本日のテーマは、その「修理対応」の話題でもあります。
かつて綴りましたが、キーエンスの営業担当者は毎日外出しないスタイルです。顧客訪問の外出の際は、たくさんのお客さまとの面談を実施するため、終日訪問に徹します。また、訪問予定先すべてに事前アポイント(訪問日時のお約束)を済ませておくことがルールであった為、毎日の外出は事実上困難なのであります。外出は週2日程度が基本で、他の日は営業所で終日電話セールスに徹します。シフト等の決められたルールはありませんが、営業日においては、各事業部製品担当の販売グループにつき、何名かが必ず営業所にいるのが通例でありました。そのため、営業窓口担当者が外出中でも、お客さまからの技術的な問い合わせには、必ず対応できるようになっていたため、結果的にクイックレスポンスの機能もあったのだと思います。
新卒入社1カ月後の5月に営業所に赴任してから、ひとりだちする前の研修期間の頃(6月中旬頃)に鮮明に覚えている一日があります。「ひとりでお留守番」です。偶然なのですが、私が所属する販売グループの責任者、先輩方全員が外出の日があったのです。その前日、先輩方から「明日は大変かもしれないけれど、がんばって」「製品のお問い合わせの対応は、もう大丈夫だよね」と声をかけられて、(顔をこわばらせながらも)「はい、おまかせください」(内心「明日は大変だあ~」)。
そして当日。いつになく、製品・カタログに記載された内容についての各種お問い合わせが殺到。電話対応中に、矢継ぎ早に伝言メモが手渡されます。電話を切った後すぐに折り返しの電話連絡を繰り返し、息つく暇もありませんでした。ただ、大半が商品のお問い合わせであり、ようやく製品知識も身に付きつつあった頃であったため、そつなくこなして「ひとりでお留守番」も合格であったと思います。そんな当日午後のことです。お客さまからの電話対応中に、複数台納入実績のあるお客さまから「製造ラインで使っているが故障、至急サービスマンを派遣して修理対応して欲しい」との急報が入りました。電話を取られた他の事業部の先輩が、伝言メモを持参して「これ大丈夫?(対応できる?)」。
大変な事態と察知された当時の営業所長が飛んできて、手順についてフォローして頂けました(営業所に赴任した早々「お客さまはメーカーの営業マンに期待している」と訓示された、あの営業所長です)。
・まずはトラブルシューティング。長くお使い頂いているお客さまなのでありえないことだが、念のため正しい使い方を提示する。
・修理が必要な場合、現地修理でなく「代替機」出荷を提案する。そして修理現品を修理実施部門の(本社)に返送頂く旨、ご了解いただけるよう連絡する。
お客さまに電話している際に、営業所長が目の前の机にすわり私を見守ります。私がお客さまとの通話中、修理が必要という流れを読まれて、すぐ本社に先手の電話をされます。いったん電話を切った際に、営業所長が「ルールとしては、代替機出荷の締め切り時間が過ぎているが、必要であれば本日出荷が可能な旨、いま確認を得ました」。すぐお客さまに、本日出荷で修理代替機を発送する旨を連絡したら、「えっ、貸して頂けるの?明日には着くの?(早い!)」と驚かれました。代替機は修理品納入までご遠慮なくお使いくださいと申し添えたら、当初は、やや激昂されていたお客さまが、とても安心された口調にかわり「どうもありがとうございます」。翌日、窓口担当である先輩が、こちらのお客さまにフォローの連絡をされたら、「代替機到着しました。ありがとう。それと昨日対応頂いた立石さんにも、よろしくお伝えください。大変助かりました」と。今思えば、入社して数か月の新人が、お客さまに感謝されるというのは、本人のスキル云々とは関係なく、間違いなく「仕組み」によるものです。
キーエンスを退職後、アンリツに入社しましたが、ライバルとなる同じ測定機器の販売では、修理対応という業務が勿論あります。アンリツでもサービス部門があって、キーエンスとは違い現地修理をおこなう出張サービスの担当者が配置されていると知りました。キーエンスの修理対応のひとつである代替機即納体制では、配送期間があるためライン復旧は翌日以降となります。出張サービスの担当者が配置されているアンリツでは、待ったなし(当日修理完了が希望)のお客さまに対して、当日の修理実施ができることも可能なはずです。当時の私は、対キーエンスを含む販売競争について「完全なる勝利」を確信したのでありました。ところが、(毎度記述していますが)そうは簡単にはいかないのであります。

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