本日は、平成29年(2017年)6月1日木曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス社員、中小企業診断士の立石です】
いまや、他社が持ち合わせない成長ノウハウの宝庫ともいえるキーエンス。
では、その成長ノウハウをキーエンスは簡単に獲得・蓄積できたのでしょうか?
勤務していた当時の答えは、NOであります。
本日は、その理由となるライバル会社との競争にも勝ち抜ける、ある販売(成長)ノウハウ獲得までの苦労話しを綴ります。

無理とは絶対に言わせない社風・無理を可能にさせる環境

キーエンスに新卒入社した当時、私は経営トップの方針に心酔しておりました。ブレの無い方針のひとつである行動指針は、現在も一字一句間違えず、スラスラと口に出せます
(キーエンスの行動指針に関連する記事は、>>>コチラをクリックしてください)。
同期である新卒入社組のほとんどは、私同様、創業者のビジョンや方針に惹かれて入社しているはずです。
高い年収という項目で、会社選びはしていません。というのも、就活当時の待遇(給与水準)は一般的な企業と、さほど変わらなかったからです(ただいまのキーエンスの平均年収については、コチラをクリックしてください)。

私が入社する以前の、いわゆる黎明期のキーエンス。
よくよく考察すれば、創業者の先鋭的な直観?あるいは執念?ともいえるオリジナル商品で成長。
その後、さらなる成長を目指し、他社との競争を選択。
それに勝ち抜いて、売上高(正確には【成果】→コチラをクリックしてください)を伸長する手順を志向したわけです。

入社して、私はキーエンスで新しい分野、センサとは異なる当時の製品群で
最も高額であった精密計測機器(おもにレーザー測長関連)の直販営業に配属されました。
何度か綴っていますが、この分野でキーエンスは後発参入。
先発企業は、当時シェアに勝るアンリツ(後年、私が転職する会社です:経緯はコチラをクリックしてください)等々がありました。
ただ、後発であれ、先行する強力なライバル会社があろうが無かろうが、
営業担当者の使命は、対前年より高い伸び率の、売上(成果)目標予算の必達であります。
目標予算の未達成について、「ライバルの存在」「製品力」等が原因といった弁明は許されません。
配属された当初、ハイテク企業のアンリツ等先行するライバル会社の存在があるとともに、センサに比べれば、販売台数が少ない高額な計測機器の為だったのか、販売グルーブの中で不満がでてきます。
奮闘しても、やすやすと売れない現実、自社製品の性能に対する不満等々です。
しかしながら、キーエンスはノンビリ・まったりの企業と違って、そういった類の発言は、後ろ向きの姿勢として認められません。
日々くすぶる不満の中で、モラール(士気)の維持のためでしょうか、
上司にあたる責任者が、メンバーを説得します(というか、引っ張るというイメージです)。

今の機器(精密計測機器)を販売するノウハウ?滝崎さん(創業者:社長)だって、わかるはずがない

責任者曰く。
『(当時)創業から100年近い歴史のあるアンリツが、まさにキーエンス創業の
1974年にレーザの精密計測機器に参入。以来10年以上トップシェアに君臨している(1987年当時)。市場を席捲する、何がしかの販売ノウハウが蓄積されているはすだが、勿論我々は、それを知ることはできない』。
そして『今の機器を販売するノウハウ? そんなことは、滝崎さん(社長:創業者)だって、わかるはずがない(キーエンスでは全員【さん】で呼び合います)』と言い切られました。
他者のせいにせず、まずは責任者も交えて、我々自らが真剣に考える必要があるとの訓示です。
さらに『技術力がベースの王座アンリツに追いつくには、一筋縄ではいかない。
だからこそ、我々(直販)営業担当者が、たくさんの施策を実施して、
独自の販売(成長)ノウハウを蓄積するしか方法はない。実際、新しい施策を実施することについて、お金(予算)を使っていいことになっているでしょ』と。
後日、責任者とマンツーマンで面談の際のことです。
『中途採用者と比べて、新卒入社組が即戦力とならないのは、
滝崎さんも当然理解されているはず。ただ、さらなる成長のために、
これまでと違った工夫やアイデアを期待して、新卒を採用しているということも、
当事者の立石さんも理解しなきゃ』。こう伝えられて、自分がやらなくては!という意識が芽生えます。
当時の私の上司である責任者は、創業者と同じく、説明能力や人を動かす能力に長けていたと思います。
そして、責任者からの今も忘れない訓示「販売施策は、まずトライとして浅く実施で良い。初動に時間をかけないこと。ただし手数はたくさん打つこと。効果が無ければ即打ち切り。効果があれば、追加でたたみかけるように実施すること」に至ります(→関連記事はコチラをクリックしてください)。
そして、訓示通りに試行錯誤の連続。
企業むけに販売する機器、とりわけ高額な機器は、営業担当者の押し込みといった手法は勿論、ましてや精神主義営業などが通用するはずもありません。
ロジカルであっても、作戦は失敗の連続。たとえ成功しても、小さい成果の繰り返し・・・それでも、責任者からは、その結果について叱責されることはありませんでした。
ただ、【何もやらないこと・手を打たないこと】だけは、許されなかったと思います。無策は、キーエンスでの存在価値を問われるのであります。

何度か綴りましたが、販売台数を伸ばせるとともに、当方が不利な『精度競争』の環境下でも、 他社と差別化するアイデアを思いつきました。
ライバル会社にも勝ち抜ける、売上(成果)を伸長させる手法でもあります。
もちろん、販売グルーブのメンバーに公開、先輩が枝葉をつけて、
その後の強力な販売(成長)ノウハウになりました。
従前よりあった【機器持参で顧客訪問】【機器無料貸し出し】とは異なる手法です。苦労を重ねて行きついたこの手法は、私の退職以降、全社で実践するキーエンスの販売(成長)ノウハウになったはずです。

プラスアルファの仕事

その他社との競争にも勝ち抜ける手法(販売ノウハウ)について、
当時の先見性を自慢したいところですが、正直言って私でなくても、いずれ誰かが思いついたと思います。
その理由は、キーエンスで働くありがたい環境です。
それは、全営業担当者に等しく『考える時間』があったという点です。
キーエンスに在職中、『その日の仕事は、その日のうちに』(詳しくはコチラをクリックしてください)とならんで、
プラスアルファの仕事』という暗黙のスローガンがあったと思います。
今の業務だけでなく、将来につながる業務を行う必要があるという意味合いだと理解していました。この『プラスアルファの仕事』には、『考える時間』が必要だと、容易にご理解頂けると思います。

反対に、連日の残業時間を、くだらない業務にあてている企業では、
毎月の目標予算達成にまい進しながら、画期的なアイデアなど出るはずがありません。
まずは、経営トップのブレの無い方針による職場の環境作り(くだらない業務を、ブレの無いルールで廃して、考える時間を捻出すること)が必要なのです。
企業の成長は、経営トップにも依存するということがキーエンスの成長で証明されています。

成長ノウハウを短期間で獲得する手法

以上のように、成長ノウハウを自社で獲得するのは、大変労力のかかることです。
これは、どの業界でもあてはまることだと思います。
キーエンス勤務時代は、残業時間を【考える時間】に充てました。
ライバル会社との競争に勝ち抜き、成長するためにも必要な手順でした。
ただ、皆さまの会社が、キーエンスのように相当な時間と労力を使う手順を省略して、成長のスキル・ノウハウを短期間で獲得する手法があります。
お気づきの通り、その実現の為に、経営コンサルタントが存在しているのであります。たとえば、経営コンサルタントの立石が提供できるものの一例は、>>>コチラをクリックしてください